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あんなに悩んでたはずなんだけどな…。 翌朝、スッキリした頭で目覚める。 「眠りが良すぎて困る!」 「バンッ!!」 隣から壁を叩かれた。 ひぇ…!朝から血気盛んな…。 隣には弟の部屋がある。 「ごめんな!」 一応謝っておく。当然、返事が帰ってくることはなかったが。 「おはよ〜」 食卓に用意されていた食パンを齧る。 「なぁ、充。聞いてもいいか」 兄に話しかけられる。だいたい予想はつく。 「なに」 「昨日、なんで伊藤龍星の話なんかしたんだ」 「え、別に…深い意味はないけど…」 「ふーん…俺も別にいいけどな。深掘りしていって傷ついても知らねぇぞ」 「…兄ちゃん、優しいよな」 「お前は騙されやすいから心配してんだよ」 兄ちゃんはしっかりものだ。兄ちゃんは言わないけど、俺は知ってる。兄ちゃんの正義感は揺るがないもので、その正義感がきっかけで救われた1人の男の子が兄ちゃんにアタックして今ではその子と付き合ってるってこと。 「男と付き合ってる兄」が恥だとでも思ってるのか1度も言ったことないよな。 その涼しい顔が乱れるんだろうか…まぁクソどうでもいいことだな。 「じゃ、俺もう行くから」 兄との会話も早々に席を立つ。 眉を下げて嫌な顔をされた。 あ、疑ってる顔だ。 ごめん、兄ちゃん。俺だって自分の好きなようにしていいと思わない? 「ねぇー!お弁当忘れてるんだけどー!」 姉の瑞希の声だ。 「まじ!ありがとう!」 受け取って急いで家を出た。 学校には電車で10駅ほど行ったところにある。 いつもの電車、いつもの車両、いつもの場所。 最寄り駅の次の駅。 やってくるのはチャラい容姿の男。 そう、伊藤龍星だ。 やっぱ、何もしなかったらカッコイイよな…。 せ、せ、セッ…クスなんて生々しいことは経験ないしよく分からないから伊藤龍星が毎日誰かとしてるなんて想像したくもないけど…。 「…なに」 「え」 やばい、見すぎた! 見てるのバレた!どうしよう、言い訳できない状況にある。 「さっきからチラチラ見てんの気になってしょうがないから理由言って」 「や、やばいやばい、見すぎた、見てんのバレた嘘、言い訳できない、カッコイイから見てたとか言えない…あの、ごめんなさい、視界から消えますから忘れてください!」 あ、あ、あぁぁ〜話しかけられたのに変なこと言ってしまったかも。 「なんだアイツ…思ってること全部口に出てるし…変なやつ」

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