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ガタン
それは静かな空間には目立つ音だった。
まさか!
その扉を勢いよく開ける。
目を疑うってきっとこれだ…。
目隠しされていた。
龍星が。
椅子の後ろで腕が縛られている。
1つ1つ鮮明に視界に飛び込む背けたくなる光景。
…!
「ふっ、ふざけるなっ、ふざけるな!!やめろ、やめてくれっ、俺のっ、それ以上はやめてくれ、やっと、俺だけの伊藤龍星になったのに今さら引っ掻き回してなんなんだよ、目障りなんだよ、これは俺のだ!!その汚い手をどけろ!!」
気づけば駆け寄って泣きながら引き剥がしていた。
なんなんだよ、なんなんだよ!
信じたくないが、事実なのだ。
知らない1年が股を広げて、龍星のソレを掴んで自分の中に入れようとしていたのだ。
龍星のソレはビキビキに筋が入り完全に勃起しているのが分かる。
性欲が強いから結果は分かってたことだけど、他人がそうさせてしまうのが悲しくなるから怖かったのだ。
いくら龍星が自分のものになっても、身体までもは支配しきれないからだ。
もっと、俺に溺れてしまえばいいのに。
目隠しを取り、縛りを解く。
「…充…っ」
龍星の腕が俺をキツく抱きしめた。
「最後の日に、最初で最後の人でいいと思えるほどに好きな人が出来たって話したろ。もうセフレは必要ないって言ったのもう忘れたのか。睡眠薬使って眠らせてまで俺を拉致して?それで満足か!?俺の心はもう1人にしか動かされねぇよ」
龍星の冷たい声が1年男子に降り注ぐ。
「そ、そんなこと言ったって!好きなんです!以前のあなたがそんなにも簡単に変わるわけかいですもんね。だって体は正直ですよ…」
「うるせぇな…出ていけ。頼むから2人にしてくれ」
言われた1年男子は涙を溜めた目で俺を睨みつけて駆け出して行った。
いやいや…俺、恋人だから。
静かになった教室で2人向き合う。
龍星は見ているこっちが恥ずかしくなるのだ。
「それ…どうすんの…俺、やろうか?」
目を逸らして言う。
「…ごめんな」
「え…」
「嫌だろ、こんなの。俺が嫌なのに、お前がいいってこと無いだろ」
あぁ…嫌でしかないけど!?
さっきも同じことを思ったのだ。
恋人になったって、多数のセフレだけでいいとした龍星には自分では癒せないほどの性欲をいつも持て余しているかもしれないと。
俺ではない誰かでも昂らせることがあるかもしれないと。
不可抗力だったとしても!
「それでも俺は!!お前がいい!お前じゃないと嫌だ!言っただろ!一目惚れだったって!嫌だと思うこともそりゃあったりしたけど、全部が嫌なわけじゃない!ドキドキしたし、俺のこと好きになればいいのにって!こんなに好きなのに、いまさらお前の性欲ごときで振り回されてたまるか!」
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