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心も知らず 第6話
「なんだよ?」
不思議そうに見上げる祐志の左耳に手を添える。その耳朶を、親指でなぞった。
「お前、ピアスは?」
「は?」
「最初の頃してただろ? ちっちゃい石の付いたヤツ」
「ああ、入学当初な。……外したよ。最初は家でとか休みの日は付けてたけど、付けるの忘れてるうちに穴塞がっちまったから。――よく憶えてんな。学校に付けてきたのなんか、外し忘れてた数回しかないぜ」
「……ああ」
勿論、憶えてる。
だって、それがキッカケだったんだ。
祐志の耳で反射する夕暮れの光が、あの夕陽に似てたから。
今度こそ絶対残したいと思わせる、眩しい光景だったから……。
「俺。あん時祐志に会わなかったら、きっと美術部入ってなかったし」
呟いた俺に、祐志が薄く笑った。
「そう? そりゃ会えててよかったな」
「だけど今は。写真の方がいいかも……」
少し色を抜いた祐志の髪がオレンジ色に輝いている。それを見つめながら、意識せず、俺の『思い』は声になってしまっていた。
「どっちなんだよ。……ところで。いつまでも人の耳朶で遊ぶの、やめてくんない?」
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