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心も知らず 第9話
「朝から夕方までここにいて、2日間でこれだけしか進まないのって、凄いよね」
「褒めんのか、けなすのか、どっちかにしてくれよォ」
ふくれっ面の俺に違う違うと首を振って、大城は言葉を変えた。
「描いたけど上手くいかないから消して、ノらないから鉛筆を置いて、でもしばらくしたらまた描いてみて、でもやっぱり何かが違うから手を止めて……の繰り返しが、ありありと出てる」
俺のデッサンを指差しながら、微笑んでみせる。
確かに、座って描いては席を立って、他の奴としゃべってはまた戻って来て、の繰り返しだったけど。
そんで。いつまでも形を成さない自分のデッサンに、正直嫌気が差していた。
「絵の評価っていうのは面白くてね。上手に描けてるから、そのままをきれいに写せてるからといって、いい評価が得られるというものでもない。苦労して描いた絵には、それがなんらかの痕として残ってて、見てるこっちも面白いよ」
「……へぇ。そう」
拗ねたままで答えると、大城が呆れた笑みを零した。
「腐るな腐るな。絵に出てしまうから」
「出るか!」
「出るよ」
おや、とでも言いたそうな顔で俺を見つめる。
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