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心も知らず 第10話
「特に織田はね。『面白い面白い』と思って描いたらそれが出てるし、この前の水彩画みたいに初めて描くものには『興味津々さ』が出てる。こうしたらいいのかな、こうすべきなのかなって試行錯誤の痕が、僕には『いい絵』として映ったよ」
「そ……かな?」
「そうそう。――だから。喧嘩なんかせずに仲良く描きなさい」
「へ?」
驚いて大城を見上げる。横から片付けをしていた手を止めて、こちらに顔を向けた祐志の気配が伝わってきた。
「し、してねぇよ。喧嘩なんか」
恐るべし、大城!
冷や汗を隠すように顔を背ける。普段なら「なぁ?」と祐志に同意を求めるところだが、とてもじゃないが顔を見れる状態じゃない。
「あー。……そういやこいつ、写真の方がいいとかってさっき言ってたな」
「なっ!」
振り返ると、少し天井を見上げるようにして呟いた祐志が、悪戯っぽい笑みを俺に向けた。
「写真部にでも移籍するつもりなんじゃねぇ?」
「えっ。写真部に入るの?」
――この野郎。
お前今すっげぇ意地悪い顔してるぞ! って、指差して言ってやりてぇ!
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