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須賀悠哉が御園唯人と出会ったのは、小学生の時だった。
須賀家と御園家は昔から、名家と呼ばれる家柄故に対立して来た歴史があったが、近代になってからは表立っての確執はない。それどころか、バブル景気が弾けた頃から業務提携もするようになり、良い面を利用し合うような関係になっていた。
『はじめまして』
満面の笑みを浮かべた唯人は、噂に違わず絵画で見た天使のように美しく、まだ幼かった悠哉は一目で彼の事を気に入った。
―― それも、短い間だったが。
父親同士は同じ大学の学友だったという話だが、パーティーなどで話す時には何処か張り詰めた雰囲気で……代々蓄積された関係が緩和されるのは難しいと、周囲は噂をしていたけれど、本当のところは分からない。
そんな、不安定な関係の中、御園の手駒であった叶多を、何故父が連れて来てしまったのか悠哉は理解出来ずにいた。
―― ビジネスには、直接関係無いだろうが。
父の狙いは分からない。叶多の父とも友人だったという話だが、胡散臭いような気もする。
―― まあ、何にせよ、返してやるつもりもない。
放課後の生徒会室に、今居るのは七人で……書記の射矢と会計の椎葉(しいば)、同じく会計の古郡(ふるごおり)、会計二人の従者が彼等の仕事を各々手伝っていて、もう一人、小泉叶多が隣の椅子に座っていた。
「射矢は従者を選ばないのか?」
「私には必要ありません」
思い立って尋ねてみると、考えるそぶりも見せずに即答されて苦笑する。他の役員は親友や恋人などを従者にするが、言われてみれば射矢の周りには取り巻きはいても、親しそうな人間は居なかった。
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