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「ガードっていうのは、不測の事態から従者を守るっていう役割の筈なのに、キミを襲う片棒を担いだ俺が選ばれた理由が分からない。だけど、とりあえず指名は受けちゃったから、学校の送り迎え位はしてやるよ。あと、何かして欲しい事は?」 「……して欲しいって、一体どういう……」 「とりあえず、何かあったら言えばいい。無理だったら出来ないって言うから」  ポンと肩を叩かれただけでビクリと身体が震えてしまう。そんな叶多を鼻で笑うと、 「ホント、小動物みたいだな」 と耳元に口を寄せて言うから、慌てて彼との距離を取った。 「そんな警戒しなくても、何もしないって言ってるだろ」 ――― じゃあ、なんであんな事っ……。 「ほら、着いたよ」  優しいとさえ思える声音に、叶多は戸惑い訝しむように佐野の顔を見上げるが、教室のドアを開いた彼は、唇に薄く笑みを浮かべて入るようにと手で促す。 「……ありがとう」  条件反射で思わず小さく頭を下げ、足を中へと踏み入れると……ざわついていた教室内が、まるで水を打ったように一瞬にして静かになった。 「おはよう」 「お、おはようございますっ」  佐野が一言挨拶をすると、驚いたように目を見張ってから、口々に皆がそれに答える。  転入してからクラスで佐野を見掛けた事は一度も無いから、過剰に見えるその反応を流石に不思議に思いはするが、聞ける相手も今はいないから叶多は黙って下を向き、自分の席へと移動した。 「おはよう」 「……おはよう」 「驚いたよ。まさか久世が従者とはね」 「関係無いだろ。元会長の佐野がガードって方が、きっと皆んな驚きだ」  静まり返った教室に、佐野と瞬の会話が響く。  ――元……会長?  初めて知った事実に叶多は瞳を大きく見開くけれど、二人の方を見ることも出来ずにただじっと耳を傾けた。

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