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「……おはようございます」
「おはよう。酷い声だな……顔色も良くないし、休んだ方がいいんじゃない?」
「大丈夫です。少し寝不足なだけなんで」
朝、大分遅れて部屋を出た叶多に、いつものように迎えに来ていた佐野が話しかけてくる。
なるべく普通に言葉を返せば、訝 しげに目を細めたが、それ以上なにも聞いてはこなかった。
だが、一目見ただけで分かるくらいに酷い有り様なのだと思えば、更に気分は憂鬱になる。
なるべく周りに悟られないようマスクを付けてはいるのだが、それでも隠しきれないくらいの疲労が滲み出していた。
昨日までの二日間……散々酷使された身体は節々が痛く立っているのもようやくといった状況で、使われ続けたアナルの中には、まだ何かが刺さったような鈍い痛みが残っている。
本来なら学校になどとても行けない状況だったが、叶多は気力を振り絞って、何とか部屋から出てきたのだ。
―― あそこには、居たくない。
起きた時、既に須賀はいなかったけれど、いつ戻って来るとも知れない恐怖に怯えて過ごすより、どんなに無理をしてでも学校へ行った方が安全だ……と、考えての行動だった。
「……あっ」
「ちょっと寄りかかってな」
エレベーターに乗ったところで佐野に肩を抱き寄せられ、慌てて身体を離そうとすると、すぐ頭上から彼の声が降ってきた。
「でも……」
「いいから。ちょっとは楽だろ?」
条件反射で身体が自然に震えだしてしまうけど、意に介した様子も見せずに佐野は飄々と言い放つ。確かに……立っているのもようやくだから、こうしていると身体は随分楽だった。
―― それに。
気のせいかもしれないが、いつもより震えが幾分小さくなったような気がする。
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