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「大丈夫、誰も乗って来ないから」
軽く頭を撫でられて、叶多は小さく頷いた。
このまま……立ったままで寝てしまってもおかしくないほと体調が悪い状況の中、きちんとした判断なんてとても出来やしなかったし、相手の佐野が以前自分にした仕打ちは覚えているが、ここ数日間教室でも、食事の時にも大抵ずっと傍にいたから、頭よりも身体が先に慣れてしまっているのかもしれない。
また、とっくに授業は始まっている時間なのにも関わらず、待っていてくれた佐野に対して、驚きと共に警戒心が少し薄らぎ始めていた。
「これは……無理そうだな」
喉でクスリと笑う声が、至近距離から聞こえてきて……重い瞼を開こうとするが、思うように身体が動かず叶多の体がフラリと揺れる。
「大丈……夫、です」
「分かってるよ」
それでも……連れ戻されてしまうのが嫌で、必死に声を絞り出すと、どこか遠くで聞こえた答えと同時に意識がプツリと落ちた。
***
「で、そのまま連れて来た……と」
「まあ、そうするしか無いんじゃない?」
眠っている叶多を担いだ佐野が教室のドアを開けると、二時限目の終わりを告げるチャイムが頭上で鳴り響いた。
勿論、狙ってやった事だから、タイミングがいい訳ではない。
そのまま、全く起きる気配を見せない叶多を椅子に座らせると……一瞬だけ目を開いた彼は、そのまま机にうつ伏せになり再度寝息を立て始めた。
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