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「保健室行った方が良かったんじゃ……」 「でも、寝てるだけだからなぁ。それにさ、ここなら会長もあんまり来たりしないだろ?」  声を潜めてそう告げると、顔色を変えた瞬がコクリと唾を飲むのが見てとれる。  彼から話しかけられるなんて事は絶対に無いと思っていたから、佐野は内心驚いていたが、間違っても表情に出すような真似はしなかった。  ―― ホントは、どっちでも良かったんだけどね。  GPS機能付きの携帯を所持している以上、どこにいようが叶多は須賀の手の中で足掻く籠の鳥だ。  見えない鎖で繋がれた彼が、心安らかに過ごせる場所など無いに等しいと言えるだろう。 「そうだな。とりあえず、ここが一番安全か」  考えに耽る佐野のすぐ横で、艶のある髪に軽く触れながら瞬がポソリと呟いた。  表面上、周りの生徒は雑談などをしているが、かなり気にはなるのだろう……チラチラこちらを伺う視線やヒソヒソ話がうざったい。 「少しは休めるだろ」 「何、考えてる。人助けって柄じゃないだろ?」  言いながら……笑みを作って瞬へ向けると、眉間に皺を刻んだ彼が声を低くして聞いて来た。 「さあ、どうだろう」 「お前がけしかけた岩崎は、転校させられた」 「岩崎? ああ、委員長……だったっけ? けしかけるなんてとんでもない。誤解だよ」  肩を竦めてそう答えると、瞬の口元が一瞬だけど僅かに歪んだ。余程頭に来たのだろう。握った拳が小さく震えているのが分かる。 「叶多に何かしたら、承知しない」 「怖いこと言うなぁ。ってか、その台詞、悠哉に言えよ」 「言える訳ないだろ」 「俺には言えるのに? 結局自分が可愛んだろ? まぁそれが普通だし、久世君のそういう所、俺は結構好きだよ」 「俺は……お前が大嫌いだ」  声が僅かに震えているのは、感情を上手くコントロール出来ていないから。去年は良く見たその姿に、佐野は口角を更に上げる。

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