268 / 301
番外編2
*圭吾×瞬(初エッチ)
「もっ、やめっ……しつこいっ!」
「なんで? ここ、こんなにしてるのに」
「やっ、触るなっ!」
既に勃ちかけてしまった股間を、服の上からなぞられて……瞬は圭吾を蹴り上げようと太股へ力を込めようとするが、伝達回路が馬鹿になったみたいに力が入らなかった。
「これ、脱がせていい?」
「……自分で脱げる。だけら……圭吾も脱げよ」
余裕ありげな笑みを浮かべ、履いているズボンを脱がそうとする圭吾を軽く睨みながらも、キスだけで既に腰砕けなのを悟られぬよう、瞬は懸命に虚勢を張る。
圭吾と体を繋げる事を了承したのは自分だから、この期に及んで怖じ気づく姿は見せたくなかった。
「分かった」
短く言葉を返した圭吾が、着ていたシャツをすぐに脱ぎ捨て、促すようにこちらを見たから、瞬も慌てて裾に指をかける。
だけど。
彼の裸は中学の頃に水泳で見てそれきりだったが、その時以上に逞しくなった男らしいその肉体に……貧相な自分を晒け出すのが恥ずかしくなって手が止まった。
瞬だって、それなりに鍛えているけれど、元々ある体格差はそう簡単には埋められない。
(それに……)
いくら好きだと言われていても、所詮 は同じ男の体だ。見て萎えないとも限らない。
「どうした? やっぱ俺に脱がせて欲しい?」
「いい。自分で脱げる」
だけど、ここまで来てはもう迷っている段階じゃないと分かってるから、瞬はコクリと唾を飲み込み、一息にシャツを脱ぎ捨てる。そのまま……勢い任せにズボンの金具も外してしまえば良いと考え、微かに震えている指先を腰の方へと動かした。
「瞬、そっちはまだいい。いっぺんに見たら俺の理性……保ちそうに無いから」
「何、言って……あっ」
唐突にベッドへ押し倒されて、上から真っ直ぐ見下ろされる。
彼を好きになってから、受け入れる側になるという事は何度も想像してきたけれど、いざ現実になってみると、恐怖にも似た感覚が湧いた。
(嫌……な、訳じゃない……けど)
むしろその正反対だ。嬉しいに決まっている。
(でも、だけど……)
「瞬……可愛い」
「んっ……ふっ」
そんな迷いを遮るように、また唇を塞がれる。同時に胸へと這ってきた指が胸の辺りを撫でるから……驚いた瞬は体を捩るが、まるでそれを窘めるように舌へと歯を立てられた。
「うぅっ……んっ」
そのまま、芯を持たない柔らかな尖りを指の腹で捏ねられる。
少しの間続けられれば、くすぐったいだけだった行為が、徐々に違う熱を帯び……。
「んっ、ふぅっ……」
固く凝ってしまった突起を、親指と人差し指とで絞るように揉まれた時には、無意識のうちに腰を浮かせ、縋るように圭吾の背中へ腕を回して掴んでいた。
「……あぅっ」
「怖い?」
「怖くなんか……ない」
唇を一旦離し、心配そうに尋ねてくるけれど、怖いなんて言えやしないから、吐き捨てるようにそう答える。
ここで怖いと瞬が告げれば、行為を止めてしまうだろう。それだけは避けたかった。
「そう、だったら続けるよ。瞬は俺に……全部任せてくれたらいいから」
端正な顔が近づいてきて、額に軽くキスを落とされる。
経験の無い自分とは違い、彼の所作の一つ一つが手慣れているのが辛かった。
(だけど、それは……圭吾本人が望んだ結果じゃない。だから……)
「瞬を……全部見せて」
少しトーンを落とした声にズグリと胸が熱を帯び……初めて目にした艶を纏った彼の表情に、飲まれてしまった瞬はゆっくりと頷き返すしかできない。
まさかこの先、常に冷静で温和な圭吾の箍 が外れてしまうとは……想像すらも出来なかったし、今の瞬には考えるだけの余裕も残っていなかった。
ともだちにシェアしよう!