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「……やっ、んくぅっ」
信じられないことが起こっている。
下肢から這い上がってくる熱を、抑える術も分からないまま、どうにかして引き剥がそうと類は指先に力を込めるが、結局それは徒労に終わり、巧みな口淫に翻弄 された。
「や、あぁっ、出る……離してください」
このままだとあっという間に、彼の口内へ粗相 してしまう。
それだけは分かるから、類は必死に哀願するが、智也の愛撫は緩まるどころか逆に激しくなっていき――。
「あ、ひっ、あぁっ……ん」
裏筋を舐め上げられ、被った皮を剥くようにして尿道口をつつかれれば……ピクピクと体を震わせながら、類は呆気なく射精した。
そして覚めやらぬ余韻の中、息を切らせて彼を見遣ると、自分の放ったその液体を、喉を鳴らして飲み込む姿が目に入り、一気に血の気が引いていく。
「あっ、そんな……」
「気持ち悦かった?」
「佐野さん……ダメです。そんな……飲んだら……汚い」
「どうして? 美味しかったよ」
言いながら……舌で唇を舐める仕草に、下半身がズクリと疼いた。慌てて股間を隠そうとするが、手首を掴まれ阻止される。
「また勃ってきた。俺に欲情した?」
口端を上げて意地の悪い質問をしてくるけれど、その声音は柔らかく、見詰める瞳はとても優しい。
嘘を吐けずに頷くと、膝を使って勃ちかけたペニスを刺激するから吐息が漏れた。
「恥ず……しいから、あまり見な……でください」
「可愛いって言ってるだろ?」
「でも……」
生まれ持っての体質で、類は体毛が非常に薄い。
薄いというより毛髪以外は殆ど生えてこなかった。
以前、『子供みたい』だと揶揄されたそこが、智也の目に触れているのが、恥ずかしくてたまらない。
「言ったろう? あれは全部嘘だって。今まで……類が恥かしいなら、待とうって思ってたけど、そろそろ信じて欲しい」
「それは……ごめんなさ……んぅ」
彼が仕掛けたキスによって、言葉は途中で立ち消えた。彼の言葉を信用していない訳じゃない。
ただ、怖かった。
どうしても……思い出してしまうのだ。
あの、暗く長い夜の出来事を。
散々犯され蔑まれた恐怖を体は覚えている。
「類、塗り替えさせて? ちゃんと、愛させて」
耳朶をベロリと舐めた智也が、低く優しく告げてくる。
気持ちが通じ合ってから、類は極力彼に自分のペニスが見えてしまわぬよう、バスルームで後孔を解し、後背位でのセックスを望んだ。
もしかしたら、実際には彼もその方が都合がいいのかもしれないと……思い始めてしまっていた。
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