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「ちょっと待って」と告げた智也がベッドを降りてしまうから……類はどうしていいか分からず、視線をウロウロさまよわせた。 「んぅっ……」  だけど、止めて良いとは言われてないから、乳首を弄る指は止めない。  智也に触れられた時にだけ、性感帯へと変わってしまう控え目な色の小さな尖りは、自分一人で触れても何も感じない筈だったのに……自慰のようなこの行為にまで今は快感を覚えてしまう。 「さのさ……さの…さん」 「ちゃんと出来たね」  無心に名を呼び耽っていると、ベッドが軋む音がして……片手に何かを持った智也に脚を大きく割り開かれた。 「あ……つめたっ……」 「一人にしてごめん。ここ、ラブホじゃないから、ローションがバスルームだった」  手に持っているボトルから、掌へと液体を垂らし、先程解した後孔へと馴染ませるように塗り込めがら、笑みを浮かべて告げてくる。 「あと、名前を呼んでくれるのは嬉しいけど、いつも言ってるだろ?」 『智也だ』と耳を舐めながら低く囁く声の直ぐ後で、脚を肩へと担ぎ上げられ、後孔へと質量のある彼の昂りがピトリと触れた。 「はっ……くぅっ!」  何度もしている行為だが、先端が肉を掻き分けるこの瞬間だけは痛みが伴い、無意識の内に体は強ばる。  いつもならば、シーツを噛んで衝撃に耐える所だけれど、正面から抱き締められたこの状況ではそれも出来ず、類は必死に歯を食いしばって智也を受け入れようとした。 「痛いね」 「……うっ……んぅっ!」  宥めるような優しい声が聞こえて類は首を振る。  痛いだなんて言ってしまったら、彼は止めてしまうかもしれない。 「心配しなくても平気だよ。止めたりしない」  まるで心を読んだかのような彼の囁きに頷くと、胸の尖りを掴んだまま、既に動かせなくなっていた手を掴まれシーツに縫い止められた。 「我慢しないで、声、聞かせて」 「あっ……あぁっ!」  自らの手淫でほんのり色づき、敏感になった尖りへと……舌を這わされ不意の出来事に上擦った声が上がってしまう。 「やっ……ふくぅっ…ああっ!」  徐々に体内へ侵入してくる彼のペニスを押し出すように、勝手にいきんでしまう体を抑えようとしたけれど……見透かしたように胸の尖りをチュッと強く吸い上げられ、愉悦に翻弄された類は自身を制御出来なくなった。 「あっ、やぁっ!」 「類、無理しなくていいから、そのまま此処に力入れてて」  下腹を軽く撫でられるけれど、言われなくても力は抜けない。 「できな……できないっ」 「大丈夫、ちゃんと出来てる。あー、ホント、可愛いな。悪いけど余裕無い……痛くなったら、あとでたくさん舐めてやるから」 「な……なにを……あっ!」  必死に耐えるその表情が、智也の欲情に火を点けたなんて事は想像も出来やしないから、彼が何を言っているのか聞こえてはいたが、理解までには至らない。  そして――。 「ひっ、あっ……ああっ!」  考えている余裕も無いまま、カリの部分まで入り込んでいたペニスで一気に穿たれた。

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