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緋吉先生の印象は綺麗で掴み所のない人といった感じ。親しみやすいようで踏み込んではいけない、そんな見極めが難しそうな人。
一から新しい生活を、なんて考えていたのに虫が良いのかもしれないけど、知った上で信頼できる人というのはとても心強いものだなと、安心感から油断して校舎の廊下を玄関へ戻っていた。
「そうだ、父さんに連絡を……」
視線を廊下の先から外した一瞬だった。突然側の教室から出てきた人とぶつかってしまった。完全な不注意。
「すみません!」
慌てて謝罪したけど相手はひどく不機嫌そうだ。春休み中だからか私服を着ているけど、おそらく上級生だろう。逆立った金髪に、校則が気になった。
「ってぇな、誰だお前」
睨みつけられて、思わず目をそらしたのがまずかった。胸ぐらを掴まれあっという間に壁に押し付けられる。身長は俺より少し高いぐらいなのに威圧感がある。とりあえず降参のポーズをとってみた。
「本当にすみません……。今年入学します堰と言います」
「入学式前の1年がなんで校舎の方に居るんだよ。って言うかちゃんと目ぇ見ろ」
おっしゃる通りです。でもあの、ぶつかった勢いで眼鏡が落ちてあなたの足元にあるので気が気でなくて……なんて言えず。再び謝罪を口にしながら相手と目を合わせる。
望み通りにしたけどまだ何か気に食わないらしく、解放してくれる様子はない。
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