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「だから、ちゃんと目ぇ見ろっつってんだろーが」 胸ぐらを掴んでいるのと反対の手が視界いっぱいに広がって、反射的に目を閉じた。眉間の辺りを押された勢いでごつん、と軽く壁に後頭部をぶつけたけれど大した痛みでもなく、殴られるわけでもなさそうなのでゆっくり瞼を上げる。 強引に前髪を上げられた、と理解したのはこぼれた髪がぱらぱらと視界に落ちた時。先生のように事情を知らない、寮長の時のように分厚い眼鏡が無い、目の色を誤魔化しただけのほとんど素の状態で目が合ってしまっている。 「……なんだお前、男前じゃねーか。なんで隠してんだ?」 咎めるでもなく馬鹿にするでもなく、純粋に疑問のトーン。そんなことは分かってる。でも、それが怖い。次に与えられる言葉は「期待はずれ」だと、身をもって知っている。 「どうした、具合でも悪いのかよ」 様子が変だと察したのか相手の言葉から怒気が収まった。顔が青ざめているのかもしれない。過去受けた中身への評価が重しのようにのし掛かり、早く解放されたい一心で言葉を繋ぐ。 「なんでも、ないです……。目は、自分の顔が嫌いなんで、すみません」 視線に耐えきれず顔を両手で覆う。もう変な奴だと思われただろう。いいんだ、がっかりされるなら早い方がいい。時間が経つほどに印象はより美化されて、反動がきつくなるから。 「……なら仕方ねぇか。悪かったな。次は気ぃつけろよ」 意外なほどあっさりと離してもらえても、しばらく顔を上げることができなかった。

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