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あれから5分ほど経っただろうか。長い息を吐いて、ようやく眼鏡を拾う。分厚いだけある、割れてもいないしキズもなさそうでほっとする。 「連絡……は、とりあえずメールでいいか」 あまり話したい気分にはなれず、無事に挨拶できました、その一文だけのメールを家族へ送ってスマホを閉じる。 こんな初日から地雷踏むとは思わなかった。一体何をしにここへ来たのか。 ふらふらと寮へ向かって歩き出す。 「対策を、立てないと」 どうやって?今でも十分不審な自覚があるのに、これ以上何かを足せば悪目立ちする。本末転倒にならないか?他に、誤魔化す方法……いや、違う。中身も変わらないときっと意味がない。少しずつでも、うまく笑い飛ばせるぐらいにならないと。 とりあえず廊下でのことは一旦忘れよう。あの人も、きっと忘れてくれているだろう。 「ただいま」 寮に帰っても宗弥の姿は無いようだった。少しだけほっとした。今は荷解きをしてしまおう。何かに没頭すれば気も紛れる。 置きっ放しだったボストンバッグを引き寄せ、イヤホンで音楽を聴きながら中身を取り出していく。ほとんどが着替えで、予備の眼鏡ケースが地味に重い。あとは筆記用具、文庫本……。ああなんだか眠くなってきた。意気込んで気を張っていたんだろうな。イヤホンからちょうど、語りかけるような歌声が流れてきて、意識はまどろみの中へ落ちていった。

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