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「君かわいいね、お菓子あげるから着いておいで」 「侑哉くん、なんか思ってたのと違ったから、ごめんね」 「あいつが派手なのは見た目だけだって。性格は地味目だから無理無理」 「ぼく、お姉さんとイイコトしない?」 「なんだ、期待したのにつまんねーやつ」 もうやめてよ。 おもちゃじゃない、飾りじゃない。中身と釣り合ってないなんて自分が一番理解してる。 特別じゃないなら普通に、普通にならないと。普通に……。 「大丈夫か」 ひどく優しい声に夢から呼び戻された。 悪い余韻にしばらく呆然として、自分が今寮に居るのだと思い出す。 「……え、と君は」 ベッドにもたれるように眠っていた俺の目の前に、見知らぬ人が屈んでいた。日が沈んでしまっているのだろう、照明も付けておらず暗いこともあって、パーカーのフードを被った彼の顔はよく見えない。 「宗弥健助(そうやけんすけ)」 「ああ、やっぱり」 寮長に聞いた通りだ。 「うなされていたから……勝手に入って悪い」 「いや、ありがとう。起こしてくれて助かった。俺は堰侑哉」 ちゃんと挨拶しようと思ったのに、格好悪い初対面になってしまったな。苦笑しながら握手しようと手を伸ばしたけれど、宗弥はその手を取らず、俺の眼鏡を少し押し上げた。 「無理しなくていい。つらい夢だったんだろ?」 さっきと同じ優しい声に、涙を拭ってくれたのだと分かった。俺は泣いていたのか。

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