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あの初対面からにこにこしていただけに、突然の無表情に軽い衝撃を受けた。これはきっと、茶化して流したらいけない。 「……なれると良いよね」 ちゃんと考えて答えたら蕗口は一瞬顔をしかめる。嘘でも嫌味でもないけれど、そう思われてしまっただろうか。 がっかりされることが多い俺だから、仲良くなれるならそれに越したことはない。 「アンタが言ってるのと違う意味で仲良くなりたいんだけどね」 「それは……」 ととととと、返事はまだいらないとばかりに包丁が動き始める。難しいなあ。ぼんやりカットされていく食材たちを見ていた。 「堰、蕗口、火安定したってさ」 ちょうど切り終わった頃に声がかかってかまどへ向かうと、さっき挨拶をしてくれたこのキャンプ施設のお兄さんが混ざっていた。どうもかまどの調子が悪かったらしい。通りで火起こし担当メンバーに汚れが目立つと思ったら。 服や顔の灰を肩に掛けたタオルで拭いながらお兄さんは「もう使ってもらって大丈夫!」と、爽やかに笑って他のグループの様子を見に行った。お兄さんありがとう。 しかし9人分、それも育ち盛りの高校生男子の昼食なので一気に全量を作ることは難しいだろうと、2回に分けて火にかけることに。大きなフライパンを振るうのは蕗口と健助。2人のおかげで、焦げることもなく屋台のような焼きそばが出来上がった。他のグループより出来が良く、味見させてほしいという声がいくつも出るほど美味しかった。 俺も料理練習しよう。

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