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「侑哉、皮剥きできる?」
俺もならって昼食の準備に取り掛かろうと、手を洗って戻ったところに差し出された人参と皮剥き器。差し出しているのは蕗口。頷いてその手から受け取り早速剥いていく。
ちらりと蕗口の様子を窺うと手の空いている他の人へも役割を振っていて、指示の仕方が手慣れているなと思う。部長とか委員長とか、何かのリーダーでもやっていたのかもしれない。
「余所見してると怪我するよ?」
「ごめん」
その通りだ。目線をにんじんに戻す。ごつごつしていて少し剥きにくいにんじん。手を滑らせないように気をつけて処理し蕗口に返すと、慣れた手つきでテンポ良く短冊切りにしていく。
「上手いね。よく料理するの?」
「まあ、たまに。暇つぶし程度かな」
あとは自分の好きなように作れるから合理的なんだ、と。なるほど。
「アンタと同クラの彼も上手いよ」
桐嶋のことだろうか。小気味良い音が聞こえてくると思っていたけれど、桐嶋が玉ねぎを切る音だったみたい。というか、当然のように同じクラスだと知っているんだな。
「アイツとも仲良い?」
「うん、仲良くしてもらってる」
へえ、と答えた蕗口は割と興味がなさそうだった。
「蕗口は?誰と仲が良い?」
「侑哉」
「またそういう……」
冗談を、と言おうと思ったけれど蕗口がなんとも言えない表情をしたので止めた。いや、表情が無いと言った方が良いのかもしれない。
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