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さすがに人数が多いのでそう簡単には犯人は見つからず、次々に「やられた」と聞こえてくる声。しばらく様子を伺っていたけれど、不思議なことにしゃがみ込んだ人たちは本当に「やられた」という顔をしている。顔を覆っていたり頭を抱えている人まで……特にペナルティだとかご褒美的なものは無かったはずだ。そこまで悔しがることだろうか。
しゃがみ込む人たちの位置から犯人を探そうと、頭の中で、それぞれの位置から糸を伸ばすイメージで中心へ繋げてみる。近い距離だと覗き込むような動作になりがちだろうから、必然犯人の周囲は被害(?)は少ないと思う。密度が低いのは、俺の斜め向かいの辺りかな。
「あ」
と思った。目が合った瞬間理解した。犯人は、蕗口だ。手を挙げるより早く、流し目からの自然な動作でぱちんとウインクが飛んでくる。なるほどこれで。
「……やられた」
しゃがみ込む俺を見届けて、にやりと笑った蕗口が目線を外した。彼のアイドルさながらのウインクでみんなやられてしまったらしい。そういう俺も、照れてしまった。
隣で同じようにしゃがんだ人が「なんだあれ」と呟く。
「くそ~!なんかむかつく」
悪態をついた彼の耳が赤くなって見えるのはキャンプファイヤーの火のせいだろうか。なんだか暖かくなってきたけれど、たぶんこれも火のせい。
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