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帰寮
バスから覗く窓の向こうに学園が見えてくる。入学して間もないので懐かしいだとかほっとする、みたいな感覚はないものの、ひと月近く寮で生活しているので「帰ってきた」という気持ちがじんわり。
「勝さん手振ってくれてる」
「ほんとだ」
学園の門が開くと守衛の勝さんが大きめに手を振って出迎えてくれた。
「みんなおかえり!」
「勝さんただいまー!」
それが嬉しくて、みんなでバスの中から手を振り返した。
バスはそのまま敷地を進み、駐車場に停まる。荷物を持ったまま食堂に集まって終わりの挨拶の後解散となった。お昼前の時間帯だったので、食堂の中がいろんなおかずのいい匂いに満ちていてお腹が鳴りそうだったし、何人かたぶん鳴ってた。分かるよ、お腹空くよね。
午後からは通常通りに授業があったけれど、キャンプに同行した先生は疲れていて、同行していない先生は興味から、でほとんど雑談だったり感想文で済んだ。
「堰」
そうして放課後、寮へ戻ろうと歩いているとふと呼ばれて、振り返ると根津先輩。俺の顔を見て「無事だな」って納得した様子でそのまま通り越して行くので慌てて背中に声をかける。
「先輩ただいまです」
「おう、おかえり」
待ってはくれなかったけど挨拶は返してくれた。この時の根津先輩を含めて、寮長だったり緋吉先生に安心した顔を向けられた半日の中で、健助が一番ほっとしていたのが不思議だ。
寝る前に聞いてみたらこう返された。
「2人の方が良い」
大部屋苦手だったのかな。
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