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何に納得したのか。聞いても良いものだろうか、それとも、聞かない方が良いことだろうか。悪い意味ではなさそうだけれど。困惑したのは一瞬で、尋ねるまでもなく「なるほど」の真意を続けて教えてくれた。
「乗堂が随分褒めていたからどんな子かと思っていたんだ。あの時の子なら教えてくれれば良かったのに」
そう言って肩をすくめた三坂寮長が、続いて考え事をするように顎に手を添える。視線は斜め上。
「まあばたばたしていたし……ん、待てよ。あの時乗堂が名前を呼んでいたのか」
そうだったかな?当事者の俺ですらもう覚えていないことを今思い出しているらしい。まるで動画を見ているかのようなニュアンスだ。
「そうそう、うちの寮生は度胸がある、ってしばらく自慢していたな。萩の子も居たんだけどね」
苦笑する三坂寮長。勇者一行設定の呪いは解けたらしい。
人づてに聞く自分の噂話にいつもなら構えるところで、なんとなく今回はそうならなかった。たぶん、乗堂寮長はこの学園に来て最初に中身を見てくれた人だから。
「“堰くん”のことはね、君たち1年生が入寮してすぐの頃に、礼儀正しい寮生が入ったと嬉しそうに聞かされたんだよ」
ちょうど思い出していた、ちゃんと挨拶ができて偉いな、と入寮した日に頭を撫でてもらったこと。それだろうか。挨拶一つでこんなに褒めてくれる人、同じ高校生でそう居ないんじゃないかな。素直に嬉しくて、少し照れくさかった。
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