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「聞いてほしいことがある」
「ああ」
身構える様子もなく即答で許されて、自分の考えに確信を持ってしまった。大丈夫、保健室でも結局抑えてくれたんだし。一度だけ深呼吸をして、隣のアコーディオンドアを開けた。
健助は椅子に座るよう勧めてくれたけれど、できるだけ同じ目線で話したかったからベッドを背にしてあぐらをかく彼の隣に腰を下ろした。なんとなく体育座りで。
1ヶ月も経って、今さらなにから話せばいいのか。
「上手く説明できるか分からないけど、できればなにも言わず最後まで聞いてほしい」
「分かった」
そうしてなんとか、4月のあの事件から今朝の紙のことまでをあまり感情を込めないようにしながら話した。蕗口のことは先輩の親戚で協力者だ、とだけ。
健助は本当に相槌さえもせず無言で聞いていて、途中から視線も俺から外してしまって様子が測れなくなってしまった。ずっと黙っていて怒っているだろうか。
「……というのが現状なんだけど……えっと、黙っててごめんなさい」
「なんで謝る?」
「心配かけたし……健助? あれ?……泣いてる?」
ようやくこちらを見た健助のフードの隙間から濡れたような跡が光った気がした。聞いてみるとすぐに顔を背けられてしまう。
「泣いてない」
「こっち向いて」
「…………」
向いてくれないので覗き込んでぎょっとした。涙じゃなく、血だった。口から血が出てる。
「健助血が……もしかして噛んだのか?」
黙っているためにそこまで? 気が動転して、とにかく血が垂れないように親指で彼の口の端を拭った。
「ごめん、そこまでしなくても良かった……聞いていられないなら止めてもいいのに」
「違う」
「保健室行こう」
「嫌だ」
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