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 健助に抱きしめられている。  オリエンテーションの時、机の下でそうされた以来で、あの時よりも余裕がない。抱きしめられているのは俺なのに、しがみつかれているようでもあって、しばらくは身じろぎもできなかった。 「健助、息ができない」  限界を迎えて血が付いていない方の手で背を叩くと、ようやくなんとか抱きしめる力が弱められた。ただし、一旦俺が呼吸のスペースを確保するとすぐにまた抱き込まれてしまった。 「侑哉」 「うん」 「側に居てくれ」 「うん、ここに居る」 「守らせてくれ」  その言葉が他の人とは違うように聞こえて困る。素直に受け入れれば納得してくれるのだろうけど、本当にそうしてしまって良いのだろうか分からなかった。守られるのが嫌だとか、頼りたくないとかそういうことではない。結果に責任が持てない。  もし怪我をしてしまったら? 大事になってしまったら? それが原因で進級に響いたら? 大事な弟さんも悲しむんじゃないだろうか。そんなのは嫌だ。 「もう十分守ってくれてる」 「侑哉」 「健助」  お互いの名前を呼んだ。なんて言えば良いか分からないのに、呼び返した。  そこにスマートフォンの振動音が割って入ってきた。その長さから、メールやメッセージではなく電話だと分かる。 「……ごめん健助、俺だ」 「ああ、出て良い」  言葉と違ってなんだか寂しそうに聞こえたので迷ったけれど、電話の方も中々切れないのでポケットから取り出して画面を確認した。  ……蕗口だ。

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