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さっきのあの動きはどうなっていたのか、何が起きていたのか思い出そうとするけど、何か分からないけどなんとかなった、というインパクトしか残っていなくてもったいない。相手が桐嶋じゃなければ普通にあのまま転倒しただろう。本当にすごいクラスメイトを持ったものだ。と、腕を掲げられながら俺は感心していた。
「よっ!」
「良くやった!」
「日本一!」
クラスメイトたちから返ってくる労い(?)の言葉に、桐嶋は感情が昂ったのか今度は抱きついてきた。足が繋がったままなのでバランスを崩して勢いのまま尻餅をつく。うーん、なんか見覚えのある体勢だな。
「なーにやってんのお前ら」
たまたま競技担当だった金剛先生が呆れたように桐嶋の両肩を掴んで俺から引き離すと、代わりとばかりに抱きつこうとした桐嶋をすんなりかわす。
「客なら誰にでも飛びつく室内犬か? じゃれてないで早く並びなさい」
「ちぇっ、労いの言葉もないの?」
「良くやった」
はぐらかすかと思ったけれど、2人一緒にわしわしと頭を撫でられた。桐嶋と顔を見合わせて喜んでいる間に、残りも頑張れよ、と先生は俺たちのせいで乱れた完走者の列形成に戻る。
確かにまだ序盤。先生のおかげでずいぶん達成感を得てしまったけれども喜ぶのは早いな。
「桐嶋、次も出番?」
「ううん。次は出ない」
「一旦席に戻って水分とらない?」
「そうする!」
全組2人3脚が終わって、一気に退場する。脚を縛っていた紐を外すと、みんな面白いぐらい歩幅がばらばらだった。
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