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 滑り出しは順調で、同時にスタートした5組の中で俺たちはしばらくトップを走った。桐嶋はトラックの外側を、普段走る時より少し歩幅を縮めて俺に合わせて走ってくれている。たぶん俺のいつものスピードよりほんの少し速い速度で、引っ張るのではなく後ろから追い風のように支えて押し出してくれて、自分だけよりも走りやすいと感じた。  不思議な感覚だった。  やがて半周したところで追いついてきたペアが、無理に俺たちを追い越そうとしてお互いのリズムが狂い、転倒してしまう。それに巻き込まれてもう1ペア転倒したのが、観客のざわつきで分かった。動揺しないように前だけを見て走ったけれど、呼吸が乱れてしまったのか最後のコーナーで桐嶋に追いつけなくなって足がもつれた。 「堰!」  だめだ、と思ったその瞬間桐嶋は俺の腰と、彼の腰に回した俺の手を強く引いて、瞬時に足の動きも狂ったリズムの方に合わせるという離れ業をやってのけた。何が起こったのか分からないまま転倒することなく走り続ける。 「あともうちょっと!」 「うん……!」  後ろから追い上げてくる気配が近づく。それでも頼もしい片足のおかげで負ける気がしない。一際大きく歓声が上がり、そのまま2人でゴールテープを切った。  「1年1組1番にゴールです」とキリの良いアナウンスを聞いて、桐嶋は隣り合った俺の手を取るとトロフィーでも掲げるように頭上に突き上げて待機中のクラスメイトに吠えた。 「有言実行やったぞー!」

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