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 その後野中先輩は部の人に呼ばれて先に席を立った。部活対抗リレーもあるからその相談だろうか。そういえば昼の部は健助や蕗口のいる2組の演技から始まるけれど、確か種目は……。 「応援合戦」  そう、応援合戦。タイミング良く健助が答えをくれた。もしかして口に出てたかな。  志常では毎年各学年ごとに1クラスが代表応援団として、クラス演技の代わりに応援合戦に参加することになっているらしい。今年はそれが2組だった。 「侑哉のためにやるから」  ごちそうさまをして、ゆっくりグラウンドへ戻り始めると健助が意気込み? を呟いた。いつものように、俺を応援してくれるってことだろう。 「ありがとう。俺も応援してる」 「なら気合い入れてくれ」 「がんばれ健助」  気合いと言うからには押し込む気持ちで強めに背を叩くけれど、健助は微動だにしない。さすが体幹が良い。結構良い音したと思うのになあ。パーカーの厚みかもしれない。それを着たままで良いことには今更驚かない。 「学ラン着るの?」 「着る」 「やっぱり三三七拍子?」 「ああ」  聞いたら全部教えてくれる健助、勿体ぶるという言葉を知らないのかもしれない。これ以上聞いたら面白みが薄れるかもな、と口を閉じたところでちょうど待機席がもう目の前だ。  じゃあまた後で、と自席に戻ろうとしたら呼び止められた。 「どうかした?」 「見ててくれ」 「もちろん」 「俺だけを」  え、と素直な疑問符が口をついた。蕗口も出るのに? と。アナウンスが昼の部の開始を知らせる。反射的にそちらを見た瞬間に、健助は何も言わずに自席に戻ってしまった。どうすれば。

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