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 偶然にしてはできすぎた位置だと思う。どちらかと目が合う前に、反射的に手を合わせてごめんのポーズを取った。友達のどちらか一方だけなんて、とてもじゃないけど俺は選べない。ちらりと見ると、蕗口は「仕方ない」という感じで笑って頷いてくれたけれど、健助は集中しているのか下を向いていて気づいていない様子だった。  目の前と言っても蕗口は大太鼓の前、健助は応援旗を持っているのでぶつからない程度に距離があり、上手く同時に視界に収めることは難しい。視界の端と端の方が近いかもしれない。交互に見ることになるかな。  ところが三三七拍子が始まっても健助は俯いたままで、動かないので蕗口ばかり見ることに。学年ごとに三三七拍子を披露しながら徐々に早くなっていって、最終的に全学年の太鼓の連打が響き渡る。  腰まで伸びる長いハチマキを揺らしながらリズム良く太鼓を叩く蕗口の様子に、観覧席からは女の子の歓声が聞こえてくる。ここでウインクしたらファンクラブできそう。 「きゃー!」  連打が掛け声とともに終わり、蕗口のウインクが飛んで、歓声が上がった。ちょっと低い声も混じってた。 「やばいお兄ちゃんのこと全然見てなかった。どこ居た?」 「知らないけど、後であの人の名前聞いといて」 「噂のウインク浴びちゃった」 「なんかキラキラが見えてきた。大丈夫? 俺しぬ?」 「生きろ」  色んなところから聞こえてくる悲鳴に、心の中で拍手。ファンクラブ結成おめでとう。

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