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小走りで向かった先では、既に借り物を見つけてきた別の人が確認を受けていた。彼が持ってきたのは人ではなく物。それが何かまでは観客からは判別できないと思うけれど、それだとつまらないから発表があるってことだろうか。
係の人がおもむろにマイクを構える。
「こちらの彼はお財布を持って来てくれました。お題は……大事な人の大事な物! さてこれはどなたの財布ですか?」
「親です」
なるほど大事だ、と会場が笑いに包まれて、係の人がオッケーサインを出した。続いて同じように「カーディガン」を持って来た人のお題が「目を引く物」で、彼は「きれいなお姉さんのひらひらした服です」と堂々と答える。
これは中々、下手するとお題や解釈で恥ずかしい思いをすることになるな、と納得して少し緊張してしまった。
「次の人」
そうしている間に順調に三坂寮長の番が回って来て、お題を係の人に渡した寮長が上に向けた手のひらを俺の方に差し出して「彼です」と自信たっぷりに言う。対照的に係の人は困惑した表情を浮かべたので、お題が「眼鏡をかけた人」でもなかったんだな、と分かった。もしそうだったら納得の表情になるはずだもんな。
「うちの生徒を連れて来てくれたんですね。学年と名前をどうぞ」
借りて来られた方の俺がマイクを向けられるとは思わなかった。
「1年の堰です」
「ご関係は?」
「先輩後輩……」
人の場合関係性まで聞くのか。それとも生徒だったからか、寮長が連れて来たからか。
「なるほど。ではお題を発表してもらいましょう」
マイクが三坂寮長に向けられてほっとしたものの、お題を聞いて気まずくなってしまった。
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