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三坂寮長は何度か立ち上がってよろけて転けるを繰り返して、ようやくふらふらしながら走り出した。この間に何人かは既にパンまでたどり着いていて、何人かはまだ苦しんでいた。
網くぐりは潔癖症じゃなければ、落ち着いてさえいたら難しいことじゃない。ここはするすると抜けて、三坂寮長は吊るされたパンにたどり着く。パンは参加者に対して少し多めに用意されていて、どれを選んでも良いし、選んだものから出たお題が難しければ選び直しても良い。汚れた手でも食べられるようにパンはちゃんと袋入り。
三坂寮長が近い位置にあったパンを取った頃、食べ終わってメモのお題を見た誰かが目的の物を探して走り出す。
「メモになんて書いてあるのか気になる」
「あれね、確か確認の時発表されるはず」
教えてくれた蕗口にそうなのか、と返したけれど、この発表が参加を嫌がる人が多い理由ということをこの後知る。
「堰くん」
突然名前を呼ばれて困惑した。呼んだのが競技に参加中の三坂寮長だからだ。もしかしてお題が「眼鏡」だったのかな?
「眼鏡ですか? どうぞ」
「いやいや、本人でお願い」
真っ直ぐこちらに走ってきた三坂寮長に手を差し出され、「眼鏡をかけてる人」の方だったか、とその手を取って立ち上がった。特に面白味のないお題に思うけれど、三坂寮長がにこにこしているのが気になる。もしかしてもっと別の何かかな。俺が連想されるようなものってなんだろう。
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