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「侑哉」 「えっ?」  網をくぐり抜けたら健助が手を差し出して待っていた。 「お前を借りに来た」 「えっと……、参加者だけど良いの?」 「大丈夫、確認した」  いつの間に。お題に沿う人が参加者だったなら仕方ないよね、という感じらしい。内容的に適当に選ぶと後でややこしいことになったりもするらしく、時間短縮のためだけに参加者を借りる人はまず居ないとか。  健助の手を借りて立ち上がるけど、一緒に行ってしまうと自分の借り物を探すことができない。 「待ってる」 「うん、分かった」  俺が借りてくるのを待ってくれると言うので、健助に見守られながらパンを選んで食べる。その間、先に食べ終わった蕗口が側に来た。 「侑哉」 「眼鏡?」 「いや侑哉を借りに来た」  そんな都合良く定番の眼鏡を差し置いて俺が選ばれるようなお題ばかりあるものだろうか。しばらくして前川も来たけど、彼は蕗口を借りたいらしい。 「良いけど。参加者半分固まってゴールとか、ウケる」 「それはそう。なんなら今の時点でボイコットに見えると思う」 「応援でもしとく?」 「がんばれー」  変なところで気が合った蕗口と前川に応援されてようやくパンを食べ終えた頃、葉桜まで合流した。なかなか砂だらけで髪もぼさぼさだ。 「葉桜、眼鏡要る?」 「いえ、ゆーやくんお借りしたいです」  眼鏡の出番が無かったな、と少し残念に思ったところで、ついに西岡までやって来た。 「堰! ハチマキいっこ貸して!」  ここでまさかのハチマキ!

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