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好きな方をどうぞ、という意味で腕を差し出すと、西岡はなぜか二つとも解いて持って行った。片手ずつ握り締めて空に掲げながら走る様子はなにかの凱旋パレードみたいで、思わず拍手しそうになるけれど、そんなことしてる場合ではなくて自分の借り物を探してこないと。
みんなに見つめられながらメモを開く。少し考えてからこのメンバーで大丈夫、と結論を出して、やっとみんなをゴールへ促せた。
「借り物は?」
「もう居る」
走り出しながらなんとなくぴりぴりした空気を感じるのはなぜだろう。居る、と言ったから、俺の借り人が自分かもしれないという緊張かな? 変なお題ではないから安心してほしい。
「え、怖い……カチコミ?」
確認場所では団体で来たものだから係の人を怯えさせてしまった。俺の顔を見て「あー」と言ったのが聞こえて、少し申し訳なくなる。全員の手元を見て紙しか持っていないのを確認すると、係の人はうんうんと頷いて驚きの進行をした。
「はい、では堰くんが借り人の人!」
俺なのが前提になっている。名前も覚えてくれている。
すかさず健助、蕗口、葉桜が手を挙げて、順番にお題を発表した。それぞれ「側に居ると安心する」「尊敬する人」「憧れ」で、身に余りすぎて放心してしまった。係の人も今度は理由を聞かず、手を挙げなかった前川に振る。
「ではあなたは?」
「そこの蕗口くんで。お題は目立つ人、です」
指し示された蕗口はひらひらと手を振り、観覧席に向けてウインクと投げキッスをして盛り上げた。歓声が上がって、係の人も「納得」の一言。
そして俺の番が回ってくる。メモには「家族(のような存在)」と書かれていた。初めは緋吉先生にお願いしようかと思った。けれど救護の邪魔はできないので、いつも側に居てくれる人たちにした。
「借り人は……みんなです」
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