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「ごほっ」 「大丈夫ですか?」  横を向いたと思ったら突然咳き込んだ寮長。むせたのかな? 「んん、大丈夫だ、なんでもない。……最近どうだ?」  調子を整えるように咳払いをしながら側まで来て、今度はすごくふわっとした話題を振る。ただ寮長に限らず先輩たちは顔を合わせた時に様子を聞いてくれるので、心配され慣れてしまった。 「おかげさまで体育祭の後から声をかけてもらうことも多くて、楽しく過ごしてます」 「随分事務的だな。まあ平穏ならそれで良い」  苦笑いの後いつもよりも柔らかく笑って、髪が乱れない程度に寮長は俺の頭を数度撫でた。頭撫でるの好きなんだろうか。いつも撫でられてる気がする。 「……よし十分過ぎるぐらいだろう。そろそろ探しに行こうか」 「はい」  それから腕時計を確認して扉を開け、すーっと肺の膨らみがこちらから分かるほどに息を吸ったかと思うと「もう良いかい」と寮に響き渡る大声で呼びかけた。 「もう良いよー!」  あちこちから応えが返ってくる。一部「まーだだよ」も混ざっていたはずだけれど寮長は待つ気はなさそうだ。 「探しに行くぞ! まだのやつは急げ!」  ばたばたと足音を聞いて楽しそうに笑い、俺の背を軽く叩くと遠ざかった足音を追うように西側を指差す。 「俺はこっちを探す。堰は東側を頼む」 「分かりました」 「見つけられなくても罰ゲームとかないから、気楽に楽しんでくれ」  そう言って一直線に歩いていく寮長をしばらく見ていると近くの部屋に消えて、すぐに見つかった誰かの大袈裟な叫び声と一緒に出てきた。  早い。俺も探しに行こう。

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