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その後もドアの裏側や靴箱の上、洗濯カゴの中など、目につく所を探して見つけていった。相変わらず時々悲鳴が響く中で時間も経ち、一度談話室に残りの人数を確認しに戻ってみるとちょうど同じように寮長も戻ってきていた。
「守備はどうだ?」
「上々です」
ぱっと見で9割ぐらいは見つけられているんじゃないかな。残りはちょっと捻った所に隠れている人だろう。
「よし、じゃあここからは場所を分けずしらみ潰しといくか。違う目線で見た方が見逃しも防げるだろうしな」
「そうですね」
同意するなり探しに出た寮長が足音を立てずに移動しながら、「○○くーん、あーそびーましょ」と愉快さを押し殺したような声で呼びかけるのを見て、同じ鬼の立場なのに緊張してごくりと喉が鳴ってしまった。あまり鉢合わせないようにしたい……。
「堰」
寮長とは別のルートでしばらく廊下を歩いていると、ふととある部屋のドアが開いた。今開いたということはかくれんぼの参加者ではないはず。
「やけに静かだがもしかして今、かくれんぼやってるか?」
ひょっこり顔を出したのは根津先輩だった。頷くと嫌そうな顔をして、手招きするので側に行く。
「こんなとこふらふらしてたら真面目に隠れろって怒られるぞ」
「さすがに怒りはしないんじゃ……それに俺も」
「しっ!」
俺も鬼です。と言いたかったけれど、先輩は急に鋭く制止の声を上げた。
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