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「先輩?」
「静かにしろ」
数秒待ってから、遠くに聞こえる微かな足音に確信を持って、俺を部屋の中へ引き入れた先輩。そのままベッド脇まで連れて行かれるとそこに乗れと言われ、何をしようとしているのか分かった。
「先輩、違うんです、俺は」
「良いから任せろ」
「わっ」
もう一度鬼だと伝えようとしたけれど、先輩に腰を掴まれてそのまま膝に座る形でベッドに一緒に乗せられてしまった。落ちたスリッパを素早くベッドの影に隠して、側のシーツを俺に被せると先輩は足の間に俺がいる状態でスマホを触り始める。シーツで見えないので気配からの予想だ。
「じっとしてろ」
こうなったなら仕方がない。隠してくれると言うなら、いっそ噂のスリルを味わうことにしよう。クッションにでもなりきれば良いのかな。抱き枕にしてもでかいと思うけれど。
「おっと、開いてなかった所が開いてるな。誰だ悪い子は?」
せめてそれらしい形になろうともぞもぞして、じっとしろと怒られたところで、急な寮長の声に緊張が走った。
「根津か、珍しいな」
「俺は参加してない」
「だろうな」
参加者じゃないのを確認したのに、寮長の声は近づいてくる。
「それはなんだ?」
「抱き枕。見りゃ分かんだろ」
「お前が……?」
信じてなさそうな様子だけれど、俺に被せられる前一瞬見えたこのシーツ、確か何かのイラストが描かれていた気がする。根津先輩の私物だったら意外に思うのも分かるかわいい感じのものが。
「野中のに決まってる」
ですよね。
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