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「そりゃそうか」  寮長の微かな笑い声が聞こえる。ただ視線を感じるから、たぶん、疑っている。 「しかしお前がそんなことするなんて珍しい。そんなに良いのか?」  手が伸びてくる気配。触られたら柔らかくないから一発でばれてしまう。思わず体に力が入ると、かばうように根津先輩が抱き枕に扮した俺を抱きしめる。 「中身がな。抱き心地良いぜ。触らせねえけど」 「……残念」  本当に残念そうに呟いて、寮長は手を引いたようだ。抱き枕に触りたいなんて癒しを求めているんだろうか。尚更中身が俺なこれは止めて正解だと思う。 「じゃあかくれんぼに戻るとするか。今度は根津も参加してくれよ」 「気が向いたらな」 「期待せずに待ってるよ」  しばらくして頭をぽふぽふされて、もう大丈夫だと合図をもらった。シーツから頭を出すと寮長の姿はなく、ちょっとした達成感で息を吐く。 「ありがとうございました、緊張感体験できました」 「なんだそれ」  根津先輩は乱れた俺の頭を更にぐしゃぐしゃにかき混ぜて、それを俺が手櫛でどうにかしようとしている間に、隠したスリッパを出してきて履きやすいように置いてくれた。 「別にずっと抱き枕になってても良いぞ」 「遠慮しておきます」  本当は探す側だしな。 「今度はぜひ参加してくださいね」 「……気が向いたらな」  部屋を出る前に寮長と同じように声をかけると、同じ答えが返ってきた。けれどなんとなく、次があれば参加してくれそうな気がした。

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