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「危ないから立ち入り禁止ってだけだぞ、本当に」  2度ほど頷いてちゃんと分かったことを伝えて、しっかり忘れることを決意した。寮長はなぜか少しがっかりしたように肩をすくめてから、気を取り直して軽く手を叩くことで空気を変える。 「ところでちょうど声をかけに行こうと思ってたんだ。残るはあと1人だぞ」  隠れていた残りの人たちは、予想通りほとんど寮長が見つけてしまっていたようだ。あと1人か。もうそれらしい所は探してしまったな。 「最後のやつは同じ所に留まらないタイプだから、1回2回じゃ見つからないかもな」  頑張って探してみてくれ、と寮長はヒントっぽい言葉をくれた。もしかしてわざと見つけないでおいてくれたのかな。  2人と別れて最後の人を探しはじめる。同じ場所に留まらないということは、別の人が隠れていた所だったり、一度見て居なかった所に隠れているかもしれない。時間がかかりそうだな、と思ったけれど割とすぐに見つかった。  そこは1階の玄関横、副寮長の間広先輩の部屋。さっきまでは無かったはずの大きめのボストンバッグがベッドの脇に置かれていた。大きめと言っても平均的な高校生男子が入るには厳しいサイズなのに、妙な存在感があって恐る恐る近づいていく。驚かせるために枕とかをいっぱい詰め込んでいるだけかもしれないと思いながら、ゆっくり開けたチャックの隙間から薄茶色の髪の毛が見えて、ぞっとしてしまった。手を引きそうになるのをなんとか抑えて全開にすると、勢いよく最後の1人が飛び出した! 「じゃじゃーん! 大当たりー!」

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