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「副寮長だ……!」 「そうだよー。堰くんお見事!」  元気な状態で間広先輩が現れたことにほっとしつつ半身入ったままのバッグを覗いてみる。どうやって入って、どうやってチャックを閉めたんだろう……。それに参加していたこと自体気づかなかった。存在感ある人なのに。 「参加してたんですね」 「もちろん。始まる前から気配消してたけどね」  寮長といい副寮長といい、かくれんぼガチ勢だった。 「堰くん、藤寮の長の候補条件、知ってる?」 「いえ」 「かくれんぼが上手なこと」  それは何の適性を見ているんだろう。リーダー気質とか、模範生とか、そういうものとは全然重ならないけれど。無理矢理挙げるなら観察眼とか? そこまで考えて、隠そうともしない間広先輩の上がりきった口角に気づいた。 「からかってます?」 「んふふふふふ。どうだろう? 一つ言えるのは、歴代の長はみーんなかくれんぼが好きだったよ」  楽しそうな寮長と、嫌そうな健助の対照的な表情を思い出す。もしかして健助も同じようなことを言われたんじゃないかな。もしそうなら、かくれんぼが条件という不思議な話にも信憑性が増してしまう。 「お話はこの辺にしておいて、みんなの所へ戻ろうね。そろそろご飯の時間だ」 「本当だ、もうそんな時間ですね」 「有望な1年生が入ってくれて嬉しいよ! ご飯がすすんじゃうなあ!」  そんなことを言いながらすっと立ち上がって先に出て行く間広先輩と萎れたバッグを見比べる。結局どうやって入ったのかも、候補条件の真偽も分からないままでただ首を傾げた。

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