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「分かってる、そういうんじゃないって分かってるけど羨ましい」
そんなに落ち込まなくても。
「俺だってせめて同じ寮なら……」
寮を移動する、と言い出しそうな必死さに、思わず「じゃあそのうち」と言ってしまったらその場で蕗口がシャツに手をかけた。
「いい加減にしろ。追い出すぞ」
健助が一喝すると素直に手を離したので、さすがに冗談だったらしい。
「仕方ない。でも、約束もらったからね」
あっ、久しぶりにウインクを浴びてしまった。思い切り視線を逸らしてしまったけれど、こういう時前髪と眼鏡で誤魔化せるから助かる。
約束したことで蕗口の機嫌はすっかりなおって、今度はシャツではなく宿題に手をつけ始める。そこからは予定通りできるところまでそれぞれ宿題を進めた。寮である程度やっておけば家に持って帰らなくて済むので荷物を減らせるし、複数人でなら分からないところを教え合ったりもできるから助かる。
「じゃあ、また休み明け」
倒れたせいで短くなった時間はあっという間だった。
明日の午後から寮も休みなのでしばらく会えなくなると、部屋を出る時蕗口に欧米の人の挨拶みたいな感じで片手でハグをされる。ナチュラル過ぎて普通に受け入れたけど、健助にはなぜか握手を求めてたのが面白かった。
みしみし聞こえたからたぶん2人ともかなりの力が入っていると思う。変なタイミングで力比べするよな。決着がついたのかよく分からなかったけどそのうち握手は解かれて、2人の手にくっきり跡が付いてるのを見た。
仲が良くなったみたいでなにより。
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