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「はい席着けー」  チャイムが鳴るのと同時に入室し、手元に視線を置いたまま教壇に立った金剛先生は、号令の後顔を上げた生徒たちをざっと見て「うわ、黒!」と感想を口にした。確かに桐嶋に限らず全体的によく焼けている。 「桐嶋と堰、お前らオセロみたいだな」  地元でほとんど引きこもっていた俺は、みんなに比べると相対的に白く見えるらしい。 「それぞれの夏休みを過ごしたようでよろしい。出欠取るぞー」  すぐに出欠、提出物確認と終えて、桐嶋が元気良く手を挙げたのを見た時、いつものイベントリマインドだな、という空気が流れた。 「せんせー!」 「はいストップ。桐嶋、お前の言いたいことは分かっている」  けれど先生はいつもと違って準備万端という感じで遮った。 「文化祭だな」  そう、9月の末に文化祭がある。展示なのか出店なのか、内容やその役割にもよるけれど、これから1ヶ月は忙しくなるはずだ。 「コンセン、成長してる……!」 「ありがとよ。ってうっせーわ」  茶化してるわけでなく桐嶋は普通に感心しているみたいで、教師として金剛先生はそれで良いのか気になった。なんとなく力を抜けるところは抜く、気にしないで良いところはしない、ってイメージ通りで、突っ込みつつも気にした様子はなさそう。立場逆なんだけどなあ。 「1週間で案出しから分担決めて必要なら買い出し、2週間強で準備、あと最終チェックって感じだが、もし劇とかやりたいならもっとハードになるからそのつもりで」  部活や委員に所属してる人はもっと大変だろう。何にも所属していない俺は裏方でひっそり終えたいなあとその時のんびり考えていた。

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