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第9話 締め切りの中心で愛を叫んでくれ!

「………チクショウ!逃げやがった……」 健は呟いた 家に電話しても…… 電話は繋がらない 携帯に電話しても電話は繋がらない 脇坂編集長は健に声をかけた 「健、どうしました?」 「……今日締め切りの作家様が……逃げやがったんです!」 「………その作家様……西園寺先生ですか?」 「………そうです!」 「………何処へ姿をくらましたのですか?」 「それが解ったら苦労しません……」 そっちがその気なら…… 健はニャッと嗤った 「編集長、西園寺先生から電話がありましたら、健はバカンスに出掛けたとお伝えください!」 「………バカンス……ですか?」 「ええ!締め切りサボって沖縄にバカンスに行ってる作家を追います! 首根っこ引っ捕まえて書かせて来ますとも!」 「………瀬尾先生ですか……」 「ふざけやがって! 思い知ると良い!」 健は支度を終えると編集部を後にした 脇坂は健を見送った その直ぐ後に健ご指名で電話が入った 脇坂に電話が回された 「西園寺先生ですか?」 『あれ?健は?いないのですか?』 「はい!締め切り前に逃げ歩く作家が多いので、キレまくって沖縄へバカンスへ行くと言い編集部を出て行きました」 『………沖縄?……沖縄に行っちゃうの?』 「多分着替えを取りに家に逝くでしょうから 逝かせたくないなら捕まえればいいのですよ!西園寺先生!」 悪魔の囁きをする 編集部の皆は………その悪魔の囁きに…… 健を想い拝んでおいた 水森は自宅へと一旦帰った ボストンバッグに着替えを詰め込んでいると、何処にいたのか西園寺が飛び出てきて水森を抱き締めた 「健、何処かに行くの?」 「原稿を上げねぇ作家様が多くてな! 沖縄に原稿を取りに行くんだよ!」 「俺も…俺も逝く!」 「…………一臣、原稿は出来たんだろうな?」 地を這うような声に……… 西園寺は健を離した 「………まだ……」 まだ出来てないから逃げたのだ…… でも健が沖縄に逝っちゃうなら話は別だ お留守番させられるなら話は別だ 「ならお留守番だな」 「逝く……健と一緒にいたい」 そう言われると弱い 「仕方ないなぁ なら沖縄で書き上げろよ? 書き上げねぇなら置いて逝くからな?」 西園寺はブンブン頷いた 一緒に何処までも逝く 「また原稿の中心で愛を叫ぶから!」 「叫ばんで良い」 「健だけ愛してるって叫ぶ 健しか愛せないって叫ぶ だから健も……俺を愛してるって言って?」 「何時も言ってねぇか?」 「足りない 一日は24時間しかないんだよ? 健への愛が24時間で足りる筈がない!」 西園寺はそう言い笑った 愛する存在だった この先も…… ずっとずっと…… 共にいる 原稿の中心で愛を叫んでやる! 健と西園寺は抱き合った お願いです…… ずっと…… ずっと…… いさせて下さい それしか望んでいなかった 「それと、これとは話は別だからな! 原稿をあげやがれ!」 厳しい取り立ての鬼は…… 誤魔化されてはくれなかった こうして二人で生きて逝く 二人の毎日は始まったばかりだった              西園寺が水森の家に押し掛けて同居して3年が過ぎた 最近の西園寺はそろそろケジメを着けねば!と水森に求婚を申し込んでいた 「まぁ、健、そろそろ俺の戸籍に入らないか?」 このままでは入院したとしても家族しか付き添っちゃダメだと謂われたら、真っ先に西園寺は除外される事を恐れていた 「俺さ‥‥西国院で生まれて水森になって、円城寺になってさ これ以上戸籍変わるのは嫌なんだけど?」 水森はこれ以上名前が変わると編集部の皆が良い顔をしないとボヤいた 「なら俺が円城寺になる」 「‥‥‥それは結構嫌かも‥‥叔父さんに何と謂えば良いんだよ‥‥」 「なら西園寺になれよ!健 俺と結婚して下さい!」 熱烈なプロポーズを受けて‥‥‥水森の心はぐらつく 西園寺は更に畳み掛けた 榊原伊織からアドバイスを受けた言葉を水森に謂うつもりだった 編集部にいると榊原伊織とバッタリ出逢った その時話をして、榊原は西園寺の苦悩を感じてアドバイスしたのだった 「健、俺が病院に運ばれて死にそうになったとしたら‥‥お前はどうする?」 「付き添うに決まってるやん!」 「家族じゃない奴は入っちゃダメだと謂われたら? お前は‥‥‥どうする? 俺はそれが嫌だから‥‥入籍してぇんだ お前は‥‥‥嫌じゃないのか?」 トドメを刺されて水森は‥‥‥ 「西園寺になる!」と宣言するしかなかった 「だから‥‥俺より早く死のうとするな!」と泣きながら怒った 「お前を看取ってやる でもな健は淋しがり屋だからな、一緒に行こうと想うんだ」 「一臣‥‥一臣‥‥ずっといよう‥‥‥」 西園寺は水森をギューッと抱き締めて 「あぁ、死しても共にいよう!」と約束した 自然と唇が合わさり‥‥舌を搦め‥‥求め合う この体躯はすっかり西園寺の好みに出来上がっていた だが何時も翻弄されるのは癪だから西園寺の上に股がり西園寺の腕をす抜いたネクタイで結んだ 「え?健‥‥‥どうして俺は縛られるのだ?」 「未来永劫、共にいてやるから‥‥お前の総てを俺に寄越せよ!」 「俺‥‥お前に掘られるの?」 「それはない‥‥‥俺のサイズじゃお前を喜ばせられねぇじゃねぇかよ?」 水森は不貞腐れて、そっぽを向いた 西園寺は笑って 「俺の総ては最初からお前のモノだ」と謂った 惚れた弱味‥‥ クラクラと来て水森は自棄糞になり西園寺の体躯に愛撫の雨を降らせた 「健‥‥手を解いて‥‥」 「もう少し一臣を味わったらな」 水森は西園寺の肉棒をペロペロ舐めていた 皮が向けた亀頭のお口は液をダラダラ流して‥‥濡れていた 開いたお口に舌を差し込み吸うと、西園寺は仰け反った 陰嚢を持ち上げ玉の裏を舐めて蟻の門渡りを指でなぞる 「この蟻の戸渡りって場所を指で押さえると射精が出来ないんだって、知ってた?」 水森は楽しそうに西園寺に問い掛けた 「知らないよ‥‥健は何処でそれを知ったんだよ?」 「作家先生が書いてた 俺は原稿を確認してるからな」 水森はそう言い笑った 本当に手強いんだから‥‥ 水森は西園寺の手を拘束していたネクタイを外した 自分から西園寺を受け入れて 「愛してる一臣! 俺を大切にしやがれ!」と謂った 西園寺は水森を抱き締めて‥‥‥腰を動かした 「大切にする! 大切にするから健‥‥‥一緒にいてくれ‥‥」 二人は隙間もなくい抱き合い 求めあった 明日も 明後日も 二人は互いを信じて生きて行こうと誓った 明日が続く限り 今日を生きようと心に決めた この尊大な作家先生と共に‥‥ 生きて行こうと心に決めた 「一臣」 「何だ?健」 「頼むから締め切りは守ってくれ!」 「‥‥‥‥」 西園寺は水森の中をかき回し、激しく腰を動かし抽挿した 「アッ‥‥‥アァッ‥‥‥このっ‥‥んっ‥‥‥」 怒りが快感に溶けて‥‥喘ぎが漏れる 「原稿をしあげねぇなら犯らせねぇからな!」 相変わらずの二人はこの先もこうして生きて逝く 明日を信じて 後日、水森は西園寺の戸籍に‥‥‥入らなかった 「俺が年上だから、俺の戸籍に入りやがれ!」 と言い、どっちの戸籍に入るかの攻防戦となった その決着はまだ着いてはいない‥‥‥

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