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第1話

雪がちらついて来たな サリューン」そう言って微笑む 肩より少しだけ長い黒髪を赤い布で縛った青年 見た目は二十代 ・・実際の年齢は三十代前  種族的特徴で二十歳で前後で多くの者達が成長を止める そしてエルフのような長い耳、宝石のような赤い瞳 「はい我が君 黒の王 アジェンダ王様」微笑み返す 長い艶やかな黒髪 同じく長い耳 片耳には小さな金の輪のピアス 片目を布でおおい 見えてるもう一つの瞳は同じく赤い色 一見するとサリューンと呼ばれた者は15,16歳ぐらいに見える少年 美しい顔立ちで 細身である ・・昔、奴隷商人達に捕まり 売春宿に売られて 彼等に薬で強制的に成長を止められ 実際は二十歳 二人とも纏うのは古代ローマ時代を少々アレンジしたような衣装である 大きな庭園が見える ギリシャ、ローマ時代のような柱の連なる 柱の廊下 二人はゆっくりと歩いている 政務など多忙なアジェンダ王は  これまでなら急ぎ足で通り過ぎるのだが・・ サリューンの方は少し足を引きずってる 敵に捕まり 拷問を受けた際に足を痛め 治癒出来なかった 本来なら 彼等 漆黒の翼を持つ黒の貴族王族  黒の種族には 再生能力がある 欠けた手足は再生出来るのだが・・ サリューンには 治癒出来ない複雑な事情があった 「私に どうか気づかいなく アジェンダ王様 私は貴方様やアリシア姫に仕える 騎士なのですから・・」 「・・私がこの庭園を眺めながら そなたとゆっくり歩きたいだけだから アジェでいい サリューン」 時折、すれ違う貴族の者達が 遠巻きに挨拶をして 異物を見るような目でサリューンをそっと見て 侮蔑の表情を浮かべる 黒の王族しか持ちえない 赤い瞳 火焔の瞳 しかも赤い瞳の生まれる確率はとても低い 片眼だけの火焔の瞳 赤い瞳は 王族の血を引く者達、貴族に稀であるが生まれ現れる 彼等は戦う為に生まれた 火焔の王で火竜王に仕える為に誕生する 現れない場合の方が多い・・ 異母兄妹婚を繰り返し純粋でより濃い血を重んじる 誇り高い黒の王族 貴族 彼等にとって 辺鄙な田舎で偶発的に産まれ それも 敵に囚われて 売春宿にいた者など 侮蔑の対象 だが・・それはアジェンダ王が選んだ婚約者アリシア姫も同じく 侮蔑の対象 アリシア姫は王族の血を引く貴族ではあったが 貧しく しかも父親は反乱の首謀者として処刑 6歳でアリシアは 下働きの奴隷として働かされていた・・ 本来なら猛反対され 邪魔が入るが 絶対的権力者 絶大な魔法の持ち主 黒の王 火焔の王 アジェンダ王には誰も逆らえない 戦場で数千万の敵を殺してきた 冷酷な王と人々は噂している 必要なら黒の大貴族でも容赦なく殺される だが彼は母を毒殺され 大事な妹は敵の人質として惨殺された それゆえ敵国 白の国との戦争では 幾つもの街を灰燼に返した 母である優しきエルテア女王の意思を継ぎ 癒しの神殿の創設者で  多くの人々の慈善を行ってる一面もあるのだが 「・・サリューン 私の黒の騎士」「はいアジェンダ様」 互いに見つめ合い そして サリューンの顎に親指で上げて ゆっくりと唇を重ね合う 「・・まだ私の発情期は終わってない それに今夜も寒くなりそうだ」 「はいアジェ様 わかっております」 少し頬を赤くして視線をそらしてサリューンは答える 「・・幼い頃からの長年の虐待で15歳のアリシア姫の身体は まだ子を産めるようには整っておりませんし 婚姻の儀も・・」 「そうだな そなたにとっては アリシア姫は 亡くした妹の代わりのような大事な存在  姫もそなたの事を兄のように慕ってる」 「・・私にとってもアリシア姫は別格だが そなたの事も とても大事な存在だ ・・始まりは私の発情期の抑えきれない欲望であった そなたにはすまぬとは思う」 「そのような事は・・私のような片眼の卑しき過去を持つ者に  尊き黒の王である アジェンダ様に大事にして頂き・・あ」 唇をそっと指先で抑えられ じっと見つめられる 顔が赤くなるサリューン 抱き合い 再び 唇を重ね合う 雪が花びらのように そっと降って来る 「ここは少々 寒いか 政務をこなしてしまわないと・・」 「はい アジェンダ様」赤くなったまま答えるサリューン そうして執務室で 山ような仕事量を 他の者達も加わり こなしてゆく 「・・サラやアラシャ リュース公ヴァントレが早く戻って来てほしいものだ 政務の方はサリューンやクインの御蔭でどうにかかたずいているが」 「春になれば 次の戦の準備だな」「はい」 そうして夜の時間 「ではアジェンダ様 サリューン様」 「まあ雪がまた降ってきましたわ 今晩は積もりますわね」 綺麗な青い瞳をキラキラさせて 微笑みながら アリシア姫が団らんの大きな部屋から出る 何気にアジェンダはアリシア姫の唇にキス サリューンの方はアリシア姫の頬に軽くキス 二人の貴公子にキスなどされて 嬉しそうに立ち去るアリシア アジェンダの部屋 髪を解いたアジェンダとサリューンはそっと抱き合い アジェンダは サリューンの首筋に唇を這わせながら チュニックの帯を緩めて 服を脱がせてゆく そうしながらアジェンダも己の服もまた 解いてゆく 「あ・・」軽く震えながら 小さな声を漏らす ベットにサリューンは半裸の身体を横たえ 上半身裸となったアジェンダはその身体を抱きしめ・・そして その時である コンコン 部屋の扉を叩く音 容赦なくアリシア姫がワゴンと共に当たり前のように部屋に入って来る 「今晩は寒いのでお酒をお持ちしましたわ アジェンダ様 サリューン様はお酒は下戸なので 温かい飲み物をお持ちしましたわ」 動きが完全に止まるアジェンダとサリューン 「では失礼します 頑張ってくださいませね うふ~っ」 本当に・・本当に嬉しそうであるアリシア姫 アリシア姫の目が言ってる  眼福ご馳走様~ 美形な二人の濡れ場 うふっ 実はアリシア姫は・・いけない?腐女子であった しかし・・相手は自分の未来の夫なのだが 「・・サリューン」「はい」 「・・・・ちょっと飲むかな」「そうですね」 酒を口にしつつ   「鍵をしたと思うのだが」 「したはずですが 姫の魔力のせいでしょう 腐女子パワー恐るべし・・」 「ん・・腐・・?」「いえ、なんでもないです」 サリューンの方も飲み物を口にしてる 「また雪が降ってますね」「ああ そうだなサリューン」 そう言いながら後ろからそっと抱きしめ サリューンの長い耳を くすぐるように 舌先で舐める 「あ、耳」赤くなり とてもくすぐったそうに長い耳を揺らす 片耳のピアスも揺れる 手からコップが落ちるが 魔法で宙に浮かび そのままテーブルに 「暖めて欲しいサリューン」「はい」 微笑んで身体を重ね合う  まだ夜の時間は始まったばかり・・・ 外には 静かに雪が降っている

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