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 式が終わったら、そのまま親と一緒に帰ってきた。  カラオケへ行く組に誘われたけど、「妹が待ってる」と言ったら、あっさり納得された。  もうこれで会わないひとが多いだろうから、ここで帰るのは薄情なやつっぽいけど……仲良い3人とは春休みに遊ぶことにしているし、別にいいかなと。  とにかく、家で休みたい。  高校生活が、俺の嘘が、終わった。  夕飯は少し豪華なステーキを食べに行って、家に帰ったのは21:00過ぎ。  自室でスマホを開くと、あきからメッセージが入っていた。 [あした、うちに来ませんか。もうひとつ約束があるので] [持ち物は?] [教科書と筆記用具を持ってきてください]  トントンと階段を降りて、リビングに顔を出す。  フォーマル服をハンガーにかける母親に声をかけた。 「あした出かけるね」 「どこに?」  まさか、聞かれるとは。  でももう嘘をつく必要はないし、変に動揺するとダメだと思ったから、堂々と答えることにした。 「先生の家」 「ええ……?」  さすがに不審がられたけど、まあそりゃそうだと思って、でも意地でも嘘はつかないぞと決めた。 「その先生、学年が違うから授業を受けたことなくてさ。けっこう前に教えて欲しいって言ったの、まさかの、本当に覚えててくれてた」 「へえ。何ていう先生?」 「国語の三船先生」 「え!?」  絶叫したのは、ドラマを見ていた更紗だ。 「それって、超イケメンの先生だよね!?」 「ああ、うん。そのひと」  更紗はさっと立ち上がったと思ったら、次の瞬間には俺の肩をがっしり掴んで揺さぶっていた。 「わたしも行く!」 「何言ってんだよ無理に決まってるだろ」 「行きたい! イケメン先生と仲良くしたい!」 「更紗は現役高校生なんだから、他校でも問題になっちゃうよ」  さらっと言ってみたら、母親もうなずいた。 「そうよ。深澄は卒業してるからいいけど、更紗はご迷惑かけることになるんだから。やめておきなさい」  むくれる更紗に、内心『再び人柱になってくれてありがとう』と思いつつ合掌する。  無事母に『卒業しているから問題ない』という認識をしてもらえたので、これからは一緒に出かけることになっても『仲良くしてもらってる』『何かと気にかけてくれる』って感じで、卒業後も面倒見の良い先生くらいの感じでいられると思う。  そこから恋愛に発展しても不思議はないよな。  性別に不思議はあったとしても、恋愛関係になる道筋として不思議はない。  そして翌日。  まさかの、母親に菓子折を持たされた。 「三船先生、こういうの気遣っちゃうタイプだと思うんだけど……」 「何言ってるの。わざわざ休みの日に自宅で勉強を教えていただくんだから、手ぶらでってわけにいかないでしょ」  申し訳ないねと困ったように笑うあきの顔が目に浮かんだけど、まあ、親にあきのことを話したってことを言ったら、きっと喜んでくれると思った。

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