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第1話

 むきだしのコンクリートの階段を駆け上がり、鍵のかかってない玄関を開くと、緑色のビーズののれんが音を立てて揺れました。食卓に座るおばあちゃんがこちらを見てにっこりと笑います。 「おかえり、りゅうくん」 「ただいま」  そう挨拶をするけれど、ここはぼくの家ではありません。隣の家のおばあちゃんの家です。学校が終わったら、この「おきの」のおばあちゃんの家で過ごすのがぼくの日課です。  ぼくはお母さんと二人暮らしで団地に住んでいて、おばあちゃんは隣で一人暮らしをしています。お母さんは働いて夜遅いので、それまでおばあちゃんの家で宿題したりゲームしたりして過ごします。おばあちゃんの家はWi-Fiが飛んでるので動画も見れるし快適です。  のれんをくぐって居間に入ると、タダシさんがグラスに麦茶を入れて出迎えてくれました。 「おかえりなさい、りゅうくん」 「ただいま、タダシさん」  ぼくはランドセルを背負ったまま、差し出された麦茶を飲み干して返しました。タダシさんは「いい飲みっぷりですね」と笑いながらグラスを笑いながら受け取りました。タダシさんは笑うと黒目がちになってとても可愛いです。ぼくはその笑顔にほんの少しだけ見とれてしまいました。   タダシさんはおばあちゃんのアンドロイドです。本当は違う名前があるらしいですが、おばあちゃんがタダシさんと呼ぶのでみんなそう呼んでいます。とても背が高くて綺麗な顔をしていてスタイルがいいです。男の人なのにお尻が大きくて胸がむちむちしていて、ちょっと目のやり場に困ります。  近所の人が噂していたけど、タダシさんはえっちなアンドロイドらしいです。  おばあちゃんは目が悪くて訪問販売の人に騙されてしまったらしいです。ぼくは騙されてかわいそうだなあと思うけど、こんなにきれいなアンドロイドが近くにいてちょっとうらやましいなあと思います。  荷物を置いて食卓につくと、コップを洗うタダシさんの丸いおしりをぼんやり眺めていました。というのも、タダシさんは死んだおじいさんの服を無理やり着せられているので、服のサイズがとても小さいんです。だから、少し屈むとズボンの上からお尻の割れ目が見えます。ぼくはそれを期待していました。 「もう遠足の準備はできたんですか?」 「……っ!」  不意にタダシさんがこちらを向いたので僕は慌てて視線をそらしました。  「う、うん、まあね。タダシさんは料理もできるの?」 「得意ではありませんが標準的なものなら出来ますよ」 「ふぅん。じゃあ、お弁当とかも?」 「ええ、作れますよ」  タダシさんのお弁当って美味しいのかなと考えていると、タダシさんはエプロンで手を拭いているところでした。その時、ぼくはエプロンの奥でタダシさんの履いている麻のズボンが不自然に盛り上がっていることに気づきました。 (あれ、タダシさんのちんちんが変だ……)  どう見ても勃っていました。  タダシさんはコップを洗いながら、えっちなことを考えているのかなぁと思ったら、ぼくもなんだかへんな気分になってきました。 「どうしました?」 「ううん、何でもないよ」  ぼくは慌てて視線をそらしました。宿題の準備をしながら、ぼくはこっそりタダシさんのちんちんを見ました。タダシさんのちんちんは先がまん丸でへんな形に盛り上がっています。 (あれ、この形……どこかで……)  そう思って壁際にある棚に目をやりました。ガラス戸の棚にはおばあちゃんが集めている色んな大きさのこけしが並んでいます。 (タダシさんのちんちんって、こけしに似て……)  そう思いかけた時、ぼくの思考は止まりました。たくさんのこけしの中にちんちんが混じっていたからです。  きれいな肌色の皮を被ったちんちんが玉をどっしりと床に降ろした状態でガラス戸にもたれかかっています。  ぼくは見間違いかと思って、一回視線をそらしてからもう一度見ました。間違いありません。ちんちんです。 「こけし、きれいになってるでしょう?」  不意におばあちゃんに声をかけられて、びっくりして顔をあげました。おばあちゃんは金色のめがねからにこにこと棚を見つめています。 「昨日、タダシさんと一緒に洗ったんだよ」 「そ、そうなんだ……」  おばあちゃんは綺麗好きでなんでも洗います。スマホも洗剤で洗って壊すぐらいです。きっと洗った時にタダシさんのちんちんとこけしを取り違えてしまったんでしょう。  この時、ぼくが「おばあちゃん、こけしとタダシさんのちんちん間違えてるよ」って言ってあげたら、どんなに良かったことでしょう。でもぼくはそう言ってあげる勇気もなく、黙って宿題をするしかありませんでした。  宿題は全然集中できませんでした。  ぼくは今まで一度もちんちんに見守られながら宿題をしたことがありません。棚から見つめてくるちんちんにどう反応したらいいかわからなくて、とても困りました。

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