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第1話

「あっ……そこっ、いいっ……あ、あぁん!」 「レオン……好きだよ……ずっと、お前だけを……」 「お、俺もっ……シモンが好き……好きっ、あ、あ、あ!」    今夜は12月24日、クリスマス・イブ。  人間界は色とりどりの光に満ち溢れ、キラキラと輝いていた。  愛する者たちがいつもは形にできぬ想いを言葉にして伝え合い、激しく身体を求め合う。  サンタクロースも真っ赤なお鼻のトナカイも思わず目を覆ってしまいそうな熱い夜が、あちらこちらで繰り広げられていた。 「レオン……レオン……っ」 「だ、だめっ……シモン、も、もういく……!」  雨神(バアル)は、ゆっくりと瞼を押し上げた。  すると、水面のように揺らめく蒼い瞳の奥に映し出されていた映像がどんどん儚くなっていく。  ついには小さな霧の粒となって飛び散ったふたりの青年の残像を見送り、バアルは深いため息を吐いた。 「ダメだ……勃たねえ……!」  バアルは眠れなかった。  寝返りを打ってみたり、ホットミルクを飲んでみたり、無理やり目を閉じてみたり……眠るためにいろいろしてみたが効果はなく、こうなったらひと汗かくしかない――そう思い立って人間界のおセッセを覗き見していたが、どんなに濃厚な目合(まぐわ)いをみても、股間はピクリとも反応しなかった。 「背中の筋肉の付き具合も、くるくるに絡み合った足毛も、相当好みだったってのになんでだよ、くっそ!」  背中からパタリと仰向けになると、剥き出しだった股間も一緒にへにょっと倒れた。  美しく輝く金色の長髪が、後頭部の下でくしゃくしゃに乱れる。 「全部雷神(トール)のせいだ……!」  長い手足を投げ出し大の字を描くと、バアルは千年来の幼馴染みに決して届かない恨み言をぶつけた。

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