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アラームを止めろ(5)*

ベッドの上では環の独壇場だった。 寝室に入ると、環は縁を抱き上げ、ダブルベッドの真ん中に横たえる。 勢いよく体を重ねたかと思うと、縁のシャツを脱がせて肌に唇と舌を走らせる。 酔いも手伝ってくすぐったさに笑いながら身もだえる縁を押さえつけ、パンツもひょいと脱がせてしまった。 「ず、ずるいよ環さん」 「何がだ。先にやってきたのはお前だろ?」 口元の笑みが復活している。 すっと身を乗り出したかと思うと、縁の耳元に吹き込む。 「手に入らない奴なんか忘れるくらい、俺に夢中にさせてやる」 「できるかなぁ?」 横目で縁が見ると、機嫌よく環が笑っている。 「簡単さ」 縁の少しとがった耳を犬歯で齧る。 耳元に愛の言葉を囁きながら、片手で性感帯を愛撫する。 「ん、ぅん」 口を閉じたまま、縁が鼻にかかった声を上げる。 つ、つ、つ、と環の指先が下腹部をたどる。 とっくに立ち上がっていた縁自身を握ると、容赦なく扱きあげた。 「縁、体重かけられてするの好きなんだろ。支配したいんだか、されたいんだか、分かんない奴だ」 環は重ねていた体を支えていた腕から力を抜くと、上半身の重みを縁に乗せる。 そのまま扱き続けると、すぐに縁は切ないため息をついた。 「ぁ、はぁん、ぁん」 次第に表情が愉悦に支配されていく。 「だめだめ、そう簡単にいかせねぇ」 縁の喘ぎ声が頂点に達する前に、環は体を起こした。 「ぇ、やめんなよ」 「まだまだ」 「やだ、いかせろ」 「もっと可愛い声を出せるようになったらな」 環は縁の額に口づける。一度縁を抱きしめてから、腰を上げさせて挿入する。 「ん!」 縁が唇を噛む。 そのまま、数度思うままに縁を突く。 「ん、んぁ、ぁぅう」 「なんで喘ぎ声抑えるんだよ。鳴けよ」 縁は唇を噛んで声を堪えたまま首を左右に振って拒んだ。 「意地っ張りだな。いいさ、それなら喘ぎたくさせるだけだ」 20分後。 「ぁ、ぁん、や、めろ、はぁ、ぁん」 「そうそう、素直に気持ちいいって言えばいいんだよ」 すっかり馴らされた縁は、とろけそうな声を上げていた。 環も満足げだ。 「ご褒美だ。いくぞ」 縁にのしかかるように上半身を再び重ねると、立て続けに勢いよく腰を打ち付けた。 「ぅ、ぁ、くそ、ぁああ」 体にかかる男の重みと、発情した体温と、かき乱される快楽が一気に縁を襲う。 命綱のようにしがみついていた理性がふつりと切れて、縁は真っ白な快楽の谷底に落ちていった。 ◇ ◇ ◇ 縁は夢を見ていた。 清流の流れる渓谷を、環と二人で歩いている。 両脇は木立が囲んでいて、風が吹くと葉のざわめきが聞こえる。 鳥も鳴いている。 「環さんちょっと待ってよー。歩くの早いよ」 「……待っててやるから早く来いよ」 足元の不安定な石の多い道を縁は飛び越えるように歩いていく。 ふと、足下の石が崩れ……。 ◇ ◇ ◇ 「目覚まし、止めるぞ」 環が縁の環境音を流していた携帯のアラームを止めた。時計は朝5時を指している。 「なんで休みの日にまでこんな時間に設定してるんだよ」 気が付くと、縁は環の背中から抱き着くように腕をまわして横になっていた。 「起きる時間、休日と平日で変えたくないから」 「今日だけは変えろ。もうちょっとこのままでいいだろ?」 環は縁の手を取ると、昨晩のように指に口づけた。

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