27 / 28

アラームを止めろ(4)

飴を舐め終わった縁が酒を飲み始めて一時間。 「おい、大丈夫か?ペース速くないか」 縁がグラスを空にする勢いに、環が心配の声をかけた。 「ふん。俺はね。せっかくの「香住さん」と一緒に帰れるチャンスをふいにしてこっちに来ちゃったの。飲まなきゃやってられないよ」 「後悔してるのか?」 「してるね。環さんは馬鹿にしてくるし」 「馬鹿にはしてないぜ。あんまり可愛いからついからかいたくなるんだ」 「それを馬鹿にしてるって言うの」 またグラスを空にして、ボトルに手を伸ばす縁を、環が止めた。 「ちょっと休憩しよう。な?」 「や・だ」 「大人気ないぞ」 「どうせお子さまですよ」 「どうしたんだよ縁。らしくないぞ。いつも冷静なのに」 「やけ酒で酔っ払ったんですー」 縁は我ながら馬鹿っぽいなと思いながらも口を尖らせる。 「おいおい、本気かよ」 「冗談に見える?」 「どうしたら落ち着いてくれるんだ?」 「キスして」 「それならお安いご用だ」 頬に手を触れてきた環を縁が止める。 「脚に。膝でいいよ」 「はあ?」 環が呆気にとられる。 「さっきシャワー浴びたから綺麗だよ」 「だってお前、膝って」 「足の指よりましでしょ?」 「なに考えてんだか……いいよ、やってやるよ」 半ば寝転がった縁のハーフパンツの裾を上げて、曲げた片膝に環がキスをする。 滅多に見ない環の伏せた目元に支配欲を覚える。 「次、指。ちゃんと一本ずつ丁寧にね」 縁は右手を差し出した。 「お前、調子乗ってんな?」 「乗ってるよ。でもキスしてくんないならもっと酒飲む。吐くまで飲む」 縁は子供じみた脅しをかける。 「はいはい」 諦めた環は縁の白い指先に唇を触れる。 まるで主に忠誠を誓う騎士のように。 「左も」 もはや環はなにも言わない。 ちゅっ、と口付ける音だけが広い部屋に静かに落ちる。 年上で、キャリアも上で、プライドも高い環を己の好きにすることに夢中になる。 「次はどこにしようかなー」 「縁……いい加減にしろよ」 環が顔をあげた。口元が笑っていない。 縁は詰め寄ると、額が触れるほど近くで言い含める。 「あのね。もともと俺はこういう性格なの。自分のやりたいようにやるし、欲しいものは手に入れる。……唯一の例外が「奏太さん」なの」 環は無言で縁の顎を掴む。 「何?」 何も言わずに環は縁にキスをした。 一番初めのキス、体だけの関係を結ぶ約束をした時を思わせるキスだった。 「で?あとは何をすればいいんだ、俺は?」 「ベッドまでエスコートしてもらおうかな」 「仰せのままに」

ともだちにシェアしよう!