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アラームを止めろ(3)

浴室から出ると、タオルとドライヤーと着替えが置いてあった。 着替えはさすがに環サイズで縁には一回りほど大きい。 袖口を折って着ると、なんだか子供になった気分だ。 髪を乾かして、リビングに戻った。 「環さん、ありがと……何笑ってんのさ」 「いや、さすがに俺のじゃ大きかったな、服。可愛くなってんぞ」 「うるさいな。これでも平均身長はあるんだよ」 「うん。いや、可愛いからこれでいい」 環は縁を抱き寄せるとさらさらの髪に頬を寄せる。 「髪さらさらだし。最高」 完全に環の機嫌は直ったようだ。環の機嫌は。 「環さん、酒。どうせいっぱいあるんでしょ?」 「おう。任せとけ。何がいい?」 「スコッチ」 「はいはい」 環はリビングの片隅の棚に行くと、一本の瓶を取り出してグラスに中身を注いだ。 棚には大小さまざまな酒瓶が並んでいて、ちょっとしたバーコーナーになっている。 戻ってきた環はグラスを縁に手渡し、ソファに座るよう促した。 「大体さ、なんで今日なの」 一口飲んだ縁は環に突っかかる。 「俺は残業してるってのに。俺様かよ」 「おいおい、急に機嫌悪くなったな。……まあ、俺がちょっとむしゃくしゃしてたから、縁の可愛い笑顔で心癒してもらおうと思ったんだよ」 「そりゃ残念だったね。この分じゃ笑顔なんて出そうにないよ」 広いソファの上で膝を抱えた縁はスコッチをちびちび飲む。 「つんつんしながら飲む酒なんて美味くないぞ」 環はそんな縁からグラスを取り上げると代わりに唇を奪った。 むすっとしたままキスを受けた縁は、口の中に舌と異物が入ってくるのを感じた。 「!」 にやっとして環が離れる。 「いつまでも拗ねてるお子さまには飴をあげような」 固くて甘いものを口の中に押し込まれた。 イチゴの甘ったるい味が口の中を占拠する。 「なんだよこれ」 「なんかポケットの中に入ってたから、縁がシャワー浴びてる間舐めてたんだけど、酒に合わないからやる」 にやにやと環がグラスを傾け酒を飲む。 「くそ甘いよ。俺も飲めないじゃん」 「お子さまにはぴったりだろ?」 ふてくされた縁は環に背を向けてソファの肘掛けに突っ伏した。 「もー。なんだよ。腹立つな」 「そう怒んなよ」 環が手を伸ばして縁の頭を撫でる。 縁が怒っているのを楽しんでいるのが分かって、縁は余計にむかっ腹がたつ。 「俺を怒らしていいの?」 縁は勝負に出た。 「は?」 「今日はやんないよ」 「おいおい」 「本気だよ」 向き直った縁は肘掛けにもたれ掛かって環に舌を出す。 環はにやにやとそんな縁を見ていたが、側に座り直すと力ずくで縁を抱き寄せた。 首筋に軽く唇を触れて、耳元で囁く。 「ま、そんな夜もいいさ。添い寝で満足だよ」 「俺、このソファで寝るもん」 「えー。36歳にここで寝ろってか。……ま、いいよ。縁のためなら一晩くらい頑張るさ」 ちょっと怯みはしたが、環は引かない。 「ここに二人寝れる?」 「こうやって抱いてればいけるだろ。なんなら徹夜でもいいぜ」 「ふん」 言い返す言葉がなくなって、縁はそっぽを向いた。 くっくっと笑いながら環が耳を甘噛みする。 「何にせよ俺は縁と一晩過ごすからな。どんな形でも」

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