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how did i accept snowy day 2

クリスマスが近づくに連れ、街の気温は急激に下がった。 色とりどりに電飾された街路樹の足元を、コートを着込んだ灰色の人間たちが足早に過ぎ去る。 上空からは、どんより重苦しい雲から千切れたような雪が音もなく降り落ちてきていた。 ウノは街を跳ねるように歩いた。 初めて見る雪、初めて経験する寒さ、初めて見るイルミネーションも、ウノにはまるでアトラクションだ。 クリスマスマーケットと称した小さなイベントが行われている通りに着くと、ウノは我慢できずに走り出した。 「あ、遠く行くなよ!」 「うん!」 楓が貸したマフラーの裾が跳ねる。栗色の髪に雪が乗っては消える。 暖かい国で育ったわりには白いウノの頬や耳が、寒さでほんのり色づいている。 楓はそんなウノの一瞬一瞬を見つめながら人混みを進んでいった。 雪を初めて見た時、の記憶なんて楓にはない。ウノが何を思うのか、楓には想像もつかなかった。 突き当たった広場には、大きなモミの木のクリスマスツリーが立っていた。 「おお、」 これには思わず楓も感嘆してしまった。隣で見上げるウノは、どう思うかな。 ちらりと横目で盗み見てみれば、ウノはコバルトブルーの瞳を細めて、真剣な、物憂げにも取れる表情で見上げていた。てっきり大はしゃぎすると思っていた楓には意外だった。 「かえで」 呼ばれて楓はひとりでにドキッとした。 ウノはまっすぐ、雪空を背景にしたツリーを見据えたままだった。ツリーの電飾がちかちかとウノの瞳のなかで弾けている。 「ぼくの国に、こんな言葉があるよ」 「”初雪を一緒に見れば、ふたりは永遠に結ばれる”」 そう聞いて思わず、楓はウノを覗き込んだ。 ウノは楓の目線に気付きながらも、避けるようにして夜空を見上げた。ウノの頬がさきほどよりも赤く染まっている。これはきっと寒さのせいじゃない。 ウノはごまかすようにクスッと笑うと、 「雪の降らない国なのに、変でしょ。きっとそれくらい永遠の愛なんてないって言いたいんだよ」 と付け加えてみせた。 「いや、そうじゃないよ」 楓はぽつりと、だけどしっかりウノに届く声で呟いた。 ウノは驚いて、やっと楓と目を合わせた。ビー玉の瞳が今日はよりいっそう輝いて見えた。 「見たことのないものを一緒に見たいと思うほどの人に出会うことは、素晴らしいことだよ」 「初めては一生のうちに一度しかないから」 楓は、なんだか自分がなにを言っているのかもわからないまま、それでも目の前のウノだけを考えながら言った。 「おれを選んでくれてありがとう、ウノ」 ウノの瞳が、こぼれ落ちそうなほどゆるゆると揺れた。 泣き出してしまいそうなウノに楓は焦ったが、ウノはぐっと堪えて微笑んだ。 その笑顔のどれほどきれいなことか、楓は心に何度も焼き付けた。 クリスマスツリーのイルミネーションがぴかぴかと光る。 都会の雪はまるで世界を演出するかのように、落ちては消え、落ちては消えた。 つんとした寒さが、握ったウノの手の温かさをより教えてくれた。 楓は、少し、ほんの少しだけ、雪の日を許してやってもいいかと思った。

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