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佐倉文明は考える

 雪は嫌いだ。幸いめったに積もることの無い地域に暮らしているので、あまり普段気にすることは無いが、数年に一度は大雪、積雪に見舞われる。  交通に乱れが生じて予約客のドタキャンが相次ぐのはもちろん、スタッフだって出勤できなくなる者も出てくる。めったに降らない地域だからこそ、たまに降るとパニックになってしまう。ホテル業に携わる者にとってはいいことなしだ。  個人的にも、寒いのは嫌いだ。幼い頃の寒くてひもじくて孤独だった記憶が蘇るから。本音を言えば、冬の間じゅうずっと家の中、いや布団の中で過ごしたいぐらいなのだ。  昨年はクリスマスの少し前に、大阪までリョウに会いに行った。重いコートは肩が凝るし、これまた大嫌いな人混みで押し合いへし合いになり、さんざんだった。けれども二人で見たプロジェクションマッピング、というかさらに詳しく言えばそれを見つめるリョウのプロジェクションマッピングよりもキラキラした横顔は、それまでのマイナスをチャラにしてしまえるほどに価値があると感じたものだ。  今年のクリスマスも何かやるなら前倒しでやらないといけない。年末年始はやはり繁忙期だ。だけどこちらから何かしようかとも言えない。なぜなら、何をすればいいかわからないから。  週末にはいつものようにリョウがやって来る、それは決まっている。普段はアヤがホテル勤務というサービス業ゆえ週末仕事だが、この週末だけは少し早い正月休み代わりの休暇を取っていた。だがしかし気の利いたデートスポットなんて知らない。そもそもアヤ自身何かしたいわけではないので、調べる気すらない。リョウがどうせ何か企んでるだろうから、何か言ってきたら付き合ってやるか、ぐらいに考えていた。

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